「大江戸線」の行方

大江戸線の光が丘~大泉学園区間の延伸事業の行方が、気になっています。

2016年4月、国の交通政策審議会が取りまとめた答申の中で、大江戸線延伸は東京圏で「進めるべき」とされる6つのプロジェクトの一つに位置付けられました。区長が「国と都において明確な位置づけを得た」と高く評価した答申です。
この答申を受けて、区議会でも大江戸線が大きく動くという期待感が広がり、所管からも例えばこんな強気の答弁が繰り返されてきました。

「大江戸線につきましては、都区の実務的な協議、導入空間の整備、沿線のまちづくり、基金などの状況を踏まえても、交通政策審議会答申で認められたプロジェクトの中で、実現の熟度は極めて高いと認識をしております。」2019.3.1大江戸線延伸推進課長

しかし、国の答申からもう3年半が経ちました。区は、特に東京都と実務的な協議を続けているようですが、その詳細は私たちには伝わってきません。大江戸線の行方が気になっている人は、少なくないと思います。
そんな中、都議会で大江戸線延伸についての踏み込んた答弁が出されました。大江戸線延伸に関する都の検討状況を具体的に言葉にしたという点では、初めてといってよい答弁です。しかし、その答弁は、大江戸線の行方が決して楽観できるわけではないと感じさせるものでした。
練馬区選出の村松都議の質問に答えて、都の局長はこう答弁しています。

山手交通局長 交通局では、地元区や関係局と連携いたしまして、大江戸線の大泉学園町への延伸について検討を進めてございます。
事業化に当たりましては、将来的な需要の見通しや収支採算性の確保につきまして、十分な見きわめを行うことが必要でありますことから、今年度、鉄道の利用実態や沿線まちづくりの将来計画等を踏まえた需要予測を実施いたしました。この結果、延伸により、1日約3万人のお客様が増加する見込みとなりました。
また、お客様の増加に伴いまして、朝ラッシュ時の混雑率が180%を上回る区間が発生するため、さらなる混雑対策が必要となることも明らかとなりました。
今後、トンネルや駅の構造等に加えまして、混雑対策についても検討を行い、改めて事業費を算出し、収支採算性を検証してまいります。

1日3万人の乗客増が見込まれる。都が、大江戸線延伸に伴う具体的な需要予測を公の場で口にしたのも初めてではないかと思います。この3万人という数字が具体的にどのように算出されたのか、都の資料には「⼤都市交通センサスの結果公表を踏まえ、交通局が保有する乗客量推計システムにより、⼤江⼾線の将来需要の⾒直しを実施(延伸の開業年次は平成39年度と仮定)」とあるだけで、その詳細は分かりません。ただ、この間、都と区――とくに区は、国や都から出された「採算性」という宿題を果たそうと躍起になって需要増のための知恵を絞ってきましたから、3万人という数字が明らかになったこと自体は歓迎すべきことのはずです。しかし、この需要増が今度は混雑率のアップという大きな問題を派生させてしまうという話になってきたのです。

混雑率がどう変わるのか? 都の資料にはこんなグラフが出ています。

延伸した場合、混雑率は200%に近づきます。国は個別路線でのピーク時の混雑率を180%以下にすることを公に目標としてきており、それを大きく上回る数字は新規整備事業としては“ありえない”設計ということになります。
では、どうするのか? 都議会の答弁では、その点にも踏み込んで語られています。

山手交通局長 延伸に伴います混雑を緩和するためには、朝ラッシュ時の列車の運行本数をふやす必要がございます。このため、交通局では、混雑対策に必要な車両編成数を算定した上で、車両の留置施設等の整備につきまして引き続き検討をいたしますとともに、列車の増発に対応するための電力設備増設の必要性などについても検討に着手することといたしました。

新たな留置施設や電力設備が必要になる。これが都の認識です。そんな話、聞いてなかった…そう思うのは私だけではないでしょう。さて、だれが、どこに、こうした新しい施設を確保するのか。そのための負担はどうするのか?

そもそも、公共交通の確保、鉄道不便地域の解消というまさに「公共の福祉」に資するべき事業です。採算性確保を大前提に、ひたすら需要増を迫り迫られてきたこれまでの議論そのものを、私たちは一度、冷静に振り返る必要があるのではないか。そんな思いを禁じ得ません。

|2019-08-11T18:42:44+09:002019年8月11日|コメントはありません

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