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図書館「指定管理」に反対討論

今年最後の区議会定例会が、終了しました。最終日の今日、本会議ではいくつかの議案に関連して討論と採決が行われました。討論・採決となったのは、稲荷山図書館、南大泉図書館、光が丘児童館、上石神井児童館などの指定管理者を決める議案です。私は、図書館の指定管理議案について反対の討論を行いました。少し長いですが以下に採録しますので、読んで頂けると嬉しいです。

 生活者ネット・市民の声・ふくしフォーラムを代表して、議案130号ならびに131号に反対の立場から討論を行います。
この二つの議案は、新たに区立稲荷山図書館ならびに南大泉図書館の指定管理者を定めるものです。稲荷山図書館には、株式会社・ヴィアックス。南大泉図書館には日本コンベンションサービス株式会社が、それぞれ候補として提案されています。


 私たちは、そもそも区立施設への指定管理の導入自体に強い懸念を表明してきました。とりわけ区民の生命と権利を支える処遇系の施設や図書館のような社会教育施設については、区みずから責任を持って管理運営にあたるべきと主張してきました。
図書館は区民の知る権利や思想信条の自由を支える施設、まさに社会教育の一翼を担う、すぐれて公共性の高い施設です。学びや表現にかかわる自由や中立性への配慮、施設やスタッフに求められる幅広い見識と教育的力量など、求められる課題は多岐にわたり、その管理運営を営利企業を含む民間に安易に委ねるべきではありません。
かつて私たちが指摘したように、政府でさえ図書館への指定管理の導入に対して慎重な判断を求めてきました。2008年、図書館法が改正された際、当時の文部科学大臣、念のために申し添えれば当時は自民党と公明党の政権でしたが、その大臣が指定管理は図書館にはなじまないという認識を口にし、さらに衆参両院がその附帯決議に於いて「指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮」するよう求めたことを、区は改めて思い起こすべきです。
しかし、こうした私たちの指摘に正面から答えることもないまま、区は図書館の指定管理を推し進めてきました。来年度、区立図書館全12館中6館で指定管理にあたる事業者は3つ、いずれも営利法人です。私たちは、図書館が特定の企業の営利活動の場となることによって、図書館の公共性、公平性、透明性、安定性が損なわれることを強く危惧します。
ひとつ例を挙げれば、今回の2事業者の人員配置計画によれば、南大泉図書館は34人のうち26人が、稲荷山図書館は42人中32人が非常勤的雇用の労働者です。経費の節減のために不安定雇用に大きく依存したこうした施設管理は、図書館に欠かすことのできない人材の確保・養成、安定的で継続的な施設運営を損ないかねないものです。
また、指定管理とセットで進められてきた学校支援事業が、今、大きな転機に立たされていることも指摘しておかなければなりません。学校支援事業の柱は学校図書館への支援員の配置ですが、この支援員はあくまで学校ではなく図書館の職員であり、学校長や教員の指揮監督下に入ることはないし、当然、学校図書館の施設管理に関わることもできません。学校図書館を学校教育の一環として、教員組織と一体となって活用するためには、支援員はたいへん中途半端な存在なのです。
今年度から、文部科学省は学校図書館担当職員の配置を地方交付税の対象としました。まずは週5日30時間配置の職員を2校に1人配置することを標準とした財政措置ですが、これによっていわゆる学校司書の配置に向けた動きは全国的にも大きく進もうとしています。練馬のように、図書館からの支援でお茶を濁すやり方は、もはや時代遅れです。
学校支援事業の検証、見直しは不可避であり、直接雇用の学校図書館担当職員の配置は時代の流れです。そしてそうである以上、この学校支援事業を大きな柱として進められてきた指定管理者の導入についても、立ち止まって考え直すべきです。
先に触れた2008年の改正で、図書館法に「図書館の運営の状況について評価を行い、その結果に基づき図書館の運営の改善を図る」ことを求める条文が置かれました。この規定について、衆参両院は「可能な限り外部の視点を入れた評価」を行うこと、また「その際、図書館協議会等を通じて、地域住民等の意見が反映されるよう十分配慮すること」を求めています。しかし、こうした法の規定に従って区や教育委員会が図書館事業の評価をしっかりと行った形跡は、残念ながらありません。それどころか、図書館協議会やそれに準ずる組織すら、いまだに練馬にはありません。法が求める評価・検証もそこそこに指定管理を広げる区のやり方は、法の趣旨に反しています。
図書館の管理運営について議論する際に決して忘れてはならない前提があります。それは、社会教育施設としての図書館の本来的なあり方をどう全うするかという視点であり、そして図書館利用者をはじめとした区民の意見を広く踏まえていく姿勢です。間違っても、狭い行政改革の土俵の上で、図書館を当座の経費節減、人員削減のための手段としてはならないということを強く指摘して、討論とします。

 

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