「まち」を変える道路事業 ~156号線説明会から~

都市計画道路156号線の説明会で、主催者である東京都・第四建設事務所の対応が適切でなかったこととして、3つ、挙げました。

①参加者の疑問や意見を幅広く受け止めるための工夫、配慮が足りなかった
②当該道路の必要性、特に基本となる交通処理機能から見た意義があいまいなままであった
③道路整備にともなう地域への影響、とりわけまちづくりとの関連が的確に説明されなかった

前の記事で①について書きましたが、今回は、順番を変えて③について取り上げます。

説明会では、「道路を作ると、その両側は用途地域が変わるのではないか」「第一種低層住居専用地域ではなくなるのではないか」という質問が出されました。
これは、とても基本的で、またとても大切な質問です。都市計画道路は、直接には交通ネットワーク、特に広域的な自動車交通のネットワークに貢献することを目的としています。他方で、道路を整備することは、間接的に他の様々な効果や影響を伴います。その中でも、地域の「まちづくり」との関連はとても重要なテーマです。道路の整備によって、あるいは道路の整備をきっかけとして、まちの姿はどう変わるのか。変えるのか?

質問した方も言及していましたが、156号線が走る地域は大半が「第一種低層住居専用地域」です。これは、都市計画で定められるまちづくりのルールのひとつである「用途地域」の一種で、「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法)。低層、ということで、建物の高さは10m以下に制限されます。建ぺい率・容積率も厳しく制限され、156号線予定地では50%-100%、一部はさらに厳しく40%-80%です。
こうして法と都市計画で維持されてきた低層の良好な住環境が、都市計画道路の整備によってどう変わるのか。地域にとって重大な関心事となるのは、しごく当然ことです。

四建の課長は、この質問に対してどう答えたか。課長はこう言いました。どんな用途地域になるかは、区が地区計画の中で決める、と。結論から言えば、形式的にはこの課長の説明は嘘ではありません。用途地域は、以前は東京都が一斉見直しという形で変更してきましたが、今は、区がまちづくりのための個別の都市計画——その典型が地区計画ですが——を定めることを前提に必要な変更を行うことになっています。しかし、それは形式的な話です。実質的には、地区計画等でどのような用途地域の変更を行うかについては、東京都がかっちりとした枠組みを決めているのです。

東京都が定めた『用途地域等に関する指定方針及び指定基準』という文書があります。2002年に定められたものです。それまでの用途地域の一斉見直しをやめ、個別・地域ごとの見直しを区が主導して進める形に改めるにあたって、その基準を定めたものです。この中には、道路事業に伴う「路線型」の用途地域の見直しについて、道路両側30mまでの区域とすることが明示され、かつ、道路が整備される前の用途地域に応じて詳しく見直しの基準が決められています。
例えば、第一種低層住居専用地域に道路ができる場合。つまり、今回の156号線のような場合ですが、この場合の見直しについてはこう書かれています。

〇第一種中高層住居専用地域を指定すべき地域
第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域を貫通する主要な道路沿いで、特に後背地の良好な環境を保護する区域
〇第一種住居地域を指定すべき地域
環状七号線の外側の区域で、おおむね12m以上の幅員の道路沿いの区域又は駅周辺若しくは生活拠点周辺等の高度利用を図る区域

つまり、低層住居専用地域に大型の道路を通す場合は、その沿道両側30mについて少なくとも中高層住居専用地域に、場合によっては住居地域に改めるべきというのが、東京都の示した基準なのです。ちなみに中高層住居専用地域の場合、練馬区で言うと最低でも容積率200%、高さ制限17mにまでは緩和されています。住居地域だと300%、30mというところもあります。17mというのは、だいたい5階ないし6階の高さです。これだけでも、低層住居地域と比べればまちの姿は間違いなく大きく変わります。

東京都がみずから「基準」まで決めて道路沿道の用途地域の見直しを進めていることを、なぜ四建の課長は答えなかったのか? 知らなかったとしたら、恥ずかしい。まちづくりに関わるものなら基本中の基本の資料です。知っていて語らなかったとしたら、それは、誠実さを疑われても仕方ありません。
道路整備がまちの姿をどう変えるのか。この点で、説明会の参加者は、正確で不可欠な情報を提供されないままに終わりました。私が「説明会のやり直しが必要ではないか?」と考える大きな理由の二つ目です。

|2018-10-18T22:14:44+00:002018年10月18日|コメント(0)

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