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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

補正予算は“土地予算”

 昨日30日の本会議で、一般会計補正予算の討論と採決が行われ、私は反対の立場から討論に立ちました。反対は、共産党、私たち(社民党・市民の声・福祉フォーラム)、生活者ネット、緑と自治、オンブズマン。一方、自民党、公明党に加え、民主党練馬クラブ、民主区民クラブも賛成でした。
 それにしても、区政と区議会の現状にあらためて強い失望感を抱かせる一日でしたね…。討論の全文を掲載します。

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 社民党・市民の声・福祉フォーラムを代表し、議案第111号、一般会計補正予算案に反対の立場から討論を行います。
 政権交代をきっかけに政治が大きな転換期に入ろうとしている時、そして政治の転換を求める国民の声がこれほどまでに強く、明瞭にあらわれている時に、練馬区政は誰に顔を向け、どこへ歩もうとしているのか。残念ながら、今回の補正予算案は、変わろうとしない、あるいは変わることが出来ない練馬区政の姿を明るみに出していると言わざるをえません。
 補正予算を編成するにあたって、練馬区は、多額の一般財源を手にしました。昨年度決算の繰越金は74億円、そのうち37億円を自動的に基金に積み上げてもなお、繰越金は17億円の増額補正です。さらに、都からの財政調整交付金が34億円の増額補正となり、これで合わせて51億円です。
 この51億円は、どうなったのか。


 一般会計補正予算は総額で192億円。このうち118億円、実に61%が用地買収費です。そして、この用地買収のために、なんと32億円もの一般財源がつぎ込まれます。これだけで、一般財源総額の6割です。
土地の買収に6割が消える予算案。一般財源の使途としては、あとは、生活保護扶助費や他会計繰り出し金などの法定の負担分を除けば、景気対策工事7億円が目立つくらいです。
しかし、不況と言えば工事、緊急対策と言えば、工事。あちらの施設でもこちらの道路でも、補修と改修が繰り広げられる中で、公共工事で息をつく区民、事業者もいるでしょう。しかし、50億円もの一般財源をつぎ込んで行う補正で、こうした公共事業ばかりが目立つというのはどうしたことか。補正予算案には、国が指示した生活対策や雇用対策は、盛り込まれています。しかし、それらは、中身も財源もまったく国まかせであり、必要性も効果もあいまいな事業が数多く含まれ、雇用対策にしても短期的・臨時的なものばかりで、極めて不十分です。区の気概と自主性が問われる肝心の一般財源を使って、なぜ、もっと直接に区民のくらしと雇用を支え励ます事業に取り組まないのか。
 保育園に入れなくて、たくさんの親と子が泣いているではありませんか。貧弱な介護サービスで疲れ果てている高齢者と家族の声が聞こえませんか。国保の保険料や医療費が払えない人はどうする? 経費節減で疲弊する介護や福祉の現場をどうする? 部活や修学旅行に参加できない、あるいはドリルさえ買えない子どもたちをどうする? 明日の、いや今日の暮らしの不安にさいなまれている人に、こんな補正予算でどうこたえようというのでしょうか。
 補正予算で買収される土地の大半は、公社からの買い戻しです。つまり、すでに事実上、区の手に移った土地です。買い戻しに、緊急性も切実さもありません。他方、用地買収費に充てられる一般財源の大半が、来年度以降、財政調整の中で補てんされます。つまり、今回の補正で支出した分は、そのまま来年度以降の自由な財源に振り替えられることになります。まるで“土地予算”とでも言いたくなる補正予算は、来年度からの新しい長期計画、とりわけその投資的な事業のために財源を留保するための手段なのでしょうか。しかし、目の前に広がる区民の困難を横に置いて、不要不急な支出に財源を振りあてる姿は、とうてい区民の期待に答えるものとは言えません。

 衆議院選挙で示された民意は、単なる「政権交代」を求めたものではありません。それは、「政権」だけではなく、「政治」の転換を求めたものであり、10年続いた自民党と公明党の政治、営利と競争で社会と暮らしを疲弊させ、「構造改革」で社会保障をズタズタにしてきた政治、財界との癒着の上にあぐらをかいた政治への強い反発にこそ支えられていたのです。
 衆議院選挙の劇的な結果も、そして「政権交代」も、自分達には関係がない。練馬の区政は、これからも変わらないし変わる必要がない。理事者はこう言います。しかし、これこそまさに噴飯ものです。国の言うがままに税制の改悪を進めてきたのはだれか。介護保険の改悪や後期高齢者医療制度を持ち上げてきたのはだれか。規制緩和、民営化の流れに精いっぱい追随してきたのはだれか。委託現場でどんなに不安定雇用が広がろうと、見て見ぬふりをしてきたのはだれか。
 この間、議会や区民からの強い批判に対して、練馬区はあえて国を支持し、後追いし、ときには先取りさえしてきたのです。練馬区政もまた、民意のきびしい審判を受けたと自覚すべきです。区政もまた、変わらなければなりません。この補正予算は、変わろうとする練馬区政を区民に示す絶好のチャンスでした。しかし、私たちのかすかな期待は見事に裏切られました。「練馬でも政権交代を!」という区民の声をしっかりと受け止め、補正予算案に対する反対の立場を重ねて表明して討論とします。

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