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ホルムズ海峡で、「日本を守る」? ~「集団的自衛権」閣議決定(3)~

 「集団的自衛権」に踏み込む閣議決定について、公明党の山口那津雄代表がこんな風に言っています。

 これは決してアメリカを守るために使う武力ではなくて、日本を守るために使う武力の行使に限られるやむを得ないものだ。個別的自衛権に近いもの、それに匹敵するものだと、そういうものに限ってこの日本を守るために必要不可欠なものであれば、それは認めてもいいのではないか。
           (和歌山市内での講演での発言 報道ステーション2014.6.28から)

 閣議決定が容認した「集団的自衛権」は「日本を守るため」のもの、「個別的自衛権に匹敵するもの」だ…個別的自衛権と集団的自衛権の間にある大きな溝、落差、飛躍をまるでないかのように言うこうした主張は、誠実な論理から導かれたものか。それとも、自分と他者を欺くために意図して語られているものか?
 日本に対して武力攻撃がないにもかかわらず、つまり武力攻撃を受けているのが他国であるにもかかわらず戦争に入ることが、どうして「日本を守るため」なのか。これは、新3要件のうち1つ目の要件がまさに言葉にしているものです。繰り返しになりますが、もう一度、拾っておきます。

 我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合

 書かれているとおり、日本が直接、武力による侵害、攻撃を受けている訳ではありません。攻撃を受けているのは「他国」です。それにもかかわらず、その攻撃が日本の「国の存立」を脅かしたり「国民の…権利」を覆すような事態になるとはどういうことか。
 他国に対する武力攻撃が、地政学的に、あるいは軍事的にそのまま日本に波及するような場合であれば、それは「個別的自衛権」の議論の中に収まったでしょう。ここで言われていることは、そうではありません。武力攻撃は他国に対するものであり、直接に(軍事的に)日本の「存立」や国民の「権利」を脅かすわけではない。それでも、「国の存立を全うし国民を守るため」(安倍首相)、あるいは「日本を守るため」(山口代表)に日本が武力を行使する場合があるし、許される――これが新3要件の立場です。
 いったいどんな場合でしょう? 具体的にどういう場合が該当するか、その議論はおおやけにはまったくと言ってよいほどなされていません。しかし、政府の立場は明確です。象徴的なのは、ホルムズ海峡の機雷掃海活動への自衛隊派遣です。この機雷掃海について、たとえば菅官房長官はNHKの報道番組で「新3要件を満たす場合に限り、(自衛隊が)機雷を除去しに行くことは可能」、ホルムズ海峡に機雷がまかれる事態は「国民生活にとって死活的な問題」と発言しています。

     ➡朝日デジタル ホルムズ海峡で機雷除去「可能」 集団的自衛権で菅氏

 ホルムズ海峡で例えば米国が戦争状態に入ったとしても、それが日本に対する軍事的な脅威になるとは言い難いことは明らかでしょう。ホルムズ海峡を通って、日本に大量の原油が輸送されている。その原油が止まれば、日本の経済や「国民生活」は確かに激しく揺れるでしょう。それを菅氏は、あえて「死活的な問題」まで言い切っています。「死活的」であれば、それはそのまま「国の存立」や「国民の…権利」が「根底から覆される恐れ」があるということです。だから自衛隊の出番だ、と…。
 安倍首相が「日本を守る」と言い、山口代表が「日本を守る」と言って正当化しようとしている自衛隊の新たな軍事活動は、例えばホルムズ海峡周辺で戦争が起きた時に機雷を取り除くために自衛隊が出動する、そして戦争の一方に加担して武力を行使する、そういうことなのです。         (続く)

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