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「新規採用ゼロ」の愚 ~区議11年、何を語ってきたか(その3)~

 「委託化」は、その最大の売りであった“財政効果”が怪しくなる一方で、職員の年齢構成など人事管理上、様々な問題を引き起こしてきました。その極めつけが、2011年度の「新規採用ゼロ」です。区は、職員削減を進めんがために、この年、ついに新規採用を一人も取らないという措置にまで訴えました。若い世代を中心に、雇用環境がたいへん厳しかった、まさにその時期のことです。
 2011年2月、区議会の一般質問で、私はこの問題を取り上げました。まさに「愚」としか言いようのない区の姿に、深い怒りを込めて。区の答弁は、「大方の区民の理解をいただける」というものでした。私は「大方の区民」に問いたかった。本当に「理解」していましたか?と。区長選に挑戦する思いを支えた、大きなやりとりでした。

池尻成二 議員として区民の皆さんからさまざまな声をいただき、またたくさんのご相談を受ける中で、最近つくづく感じることがあります。それは、第1に区民生活の安定と命の安心が損なわれているということ、そして第2に練馬のまちのよき姿が失われつつあるということです。少なからぬ区民が生きにくさを感じ、生活の不安と孤立感を募らせ、時代の閉塞感の中で将来への希望や見通しを持てないでいることは、他の議員の皆さんも、つとに感じているところでしょう。こうした区民の姿が、区に伝わっていないはずはありません。住民の福祉の増進を図ることを基本とする地方自治体として、この時代の区の第一の、また最大の責務は、まずこうした区民の思いにしっかりと寄り添うことです。しかし、現実の練馬区政は違います。
 例えば、若い世代の苦境をどうするか。何十、何百もの会社にエントリーしても、面接すらなかなか受けられない。仕事がない。いくらかでも安定した、そして自立した生活を成り立たせる仕事がない。力を生かす場も機会もない。この世代の若者を数多く知っているだけに、彼ら、彼女らの苦境は痛切に迫ってきます。区長もよくご存じのとおり、日本国憲法はその27条で勤労の権利を宣言しています。「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と。勤労、働くことは、国民の義務であるだけでなく、また権利でもあります。たくさんの若者たち、働く意思も力もある若者たちが、就職先を求めてさまよっている現状は、まさにこの勤労の権利が奪われているものであり、社会、とりわけ政治に対して、強くその責任を問うていると考えますが、区長はこの事態をどう受けとめておられますか、まずお答えください。
 若者の雇用不安を語るとき、私はどうしても志村区政の行政改革に触れざるを得ません。志村区政の象徴は、職員の削減、委託化・民営化を柱とした行政改革でした。そして、この行政改革は、区政の周辺に大量の不安定雇用を生み出す一方で、とうとう来年度、一人も新規採用をしないという事態にまで行き着きました。今年度末の退職者は、定年退職だけで114人にも上るといいます。区職員の超過勤務時間は、合計で年40万時間を超えています。残業が月100時間以上もしくは3か月で240時間以上に達するいわゆる過重労働の該当者は、今年度、既に延べで89人と前年度の総計を上回っています。年休消化は平均で13日、毎年7日分の権利を放棄せざるを得ないという状況です。減る職員、減らない残業、多額の超勤手当、そして過重労働。新しい職域や事務事業への対応以前に、人が充足しているとは到底言えない状況でしょう。それにもかかわらず新規採用ゼロ。世代の新陳代謝や年代間のバランスなどを考えても、合理的で適切な人事政策とは到底思えません。
 そもそも、5,000人に上る職員を抱えた練馬区が、一人も職員を採用しないということが、社会に対して、職を求める若者に対して、一体どんなメッセージを意味するか区長は考えたことがおありでしょうか。区職員の超過勤務手当支給額は年間で13億円を超えています。これは、単純に計算すれば、正規職員200人分もの人件費に相当する額です。給与カットや所定労働時間の強制短縮のような乱暴な措置をとらなくても、残業を減らし、あるいはシェアリングすれば、財政的にも新たに人を雇うことはまったく無理のないことであったはずです。なぜ熱意ある若者を、例えば地域の自治や福祉を推し進めるためのスタッフとして雇用するくらいの発想がなかったのか、返す返すも残念でなりません。雇用環境が極めて厳しいこの時代、区内最大の雇用主としての社会的責任をしっかりと認識するならば、新規採用ゼロの方針は全くの愚策であり、直ちに撤回することを求めます。お答えください。
総務部長 私から、職員の採用に関するご質問についてお答えいたします。…
 正規職員の新規採用の停止につきましては今年度限りのものであり、近年の採用者が、学校卒業直後に採用される例が少ないことから、職員の年齢構成に著しい偏りは生じないものと見込んでおります。いずれにいたしましても、今後の区の人事施策に支障のないように対応してまいります。…
 このたびの正規職員の新規採用の停止は、区民福祉の向上を実現するための持続的な行財政基盤を確立し、70万区民の信託にこたえていくために必要な対応であるという点で、大方の区民の皆様からご理解をいただけるものと考えております。区といたしましては、引き続き、職員数の適正化を図るとともに、明日の区政を担う人材の確保と育成に努めてまいります。

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