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「大鷲神社」はどうなるのか? ~石神井公園駅南口「再開発」(その3)~

石神井公園駅南口西地区再開発計画について区が議会に提出した資料の中に、建築計画概要という図面があります。2月7日のこのブログで紹介した図面です。その中の2階平面図に、神社の絵がかいてあります。

この神社については、所管の課長が口頭でこんな説明もしています。
「現在の大鷲神社に関しましては、2階レベルに人工地盤を敷き、その上に社殿を再建いたします。神社境内には、駅側からも232号線側からもアプローチできるように、検討中でございます。」
大鷲(おおとり)神社は、社殿とその敷地の大半が都市計画道路232号線の道路区域の中にあります。道路を整備することになった場合、大鷲神社をどうするのか。この問題は、南口西地区のまちづくりの中で実はたいへん大きな課題の一つでした。そして、神社の土地などに権利を有する宮司や氏子さんたちを市街地再開発事業に参加させ、権利変換の仕組みを通して再開発ビルの中に神社を「再建」する――これが、再開発準備組合や区が温めてきたプランです。
しかし、課長のごく簡単な説明を聞いただけでも、疑問がわいてきます。「神社の境内」とは、どこのことを指すのでしょう?2階の空地部分、ここは公開空地でも再開発ビル内の共有空間でもなく、「神社の境内」なのでしょうか?
神社は、社殿だけでは成り立ちません。鳥居があり、境内があってこその神社です。鳥居はどこに立てるのか。境内を占有する権利はどこから生まれるのか?
実は、区議会に「宗教法人・大鷲神社」の名前で「大鷲神社の再興と石神井公園駅南口再活性化のまちづくりに関する陳情書」が提出されています。その理由のところには、こんな記述があります。
「現在検討中の市街地再開発事業が実現されれば…(大鷲神社を)再開発ビルの敷地内に遷座し、都市計画道路232号線に面して鳥居を建て、木々の緑にあふれたオープンスペースに境内地を設けて新社殿を構えることが可能となります。これにより、将来に亘って当地区全体として神社祭礼・酉の市などの行事が盛大に開催することができるようになり、大鷲神社が街の象徴としての役割を担うことが期待されています。」(赤文字は、議会事務局が受理する過程で削除された部分)
陳情代表者は、再開発準備組合に深く関わって来た方です。ここに書かれていることは、準備組合の中で語られてきたことなのでしょう。しかし、これを読むと、ますます疑念・懸念が広がります。鳥居を建てる場所は、どこなのでしょう。道路区域や公開空地に鳥居を建てる、などということになるのでしょうか。「オープンスペースに境内地を設ける」とありますが、公開空地を神社の占用区画とすることは可能なのでしょうか?
「政教分離」という、憲法上の大原則があります。区や都が許可・認可をし、財政的にも少なからず関与するであろう公的な事業において、「神社の再興」を大きな目的として掲げ、それどころか神社のために様々な便宜を与えるとすれば、それは政教分離に触れるものではないでしょうか。3フロアも床を買うつもりでいる練馬区は、共有部分の最大の区分所有者になるはずです。区が、区の所有部分を宗教法人の宗教施設・宗教活動のために占有することを認めるとしたら、それは政教分離に触れるものとはならないのでしょうか。
大鷲神社の存続・再建を願う地域の声は、大切にしたいと思います。しかし、物事には、ルールと節度というものがあります。もし万一、政教分離に触れるような形で再開発事業が検討されているとしたら、それは大きな問題です。
もっとも、神社の社殿や鳥居や境内が実際にどうなるのか、その詳細は区の口からは語られていません。宗教法人が出した議会陳情も、まだ審査もされておらず、その内容が公に確認されたわけでもありません。関係者が十分慎重に、また自制をもって対応されることを強く願っています。

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