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「全国を先導する地域コジェネ・システム」が、これ?

Summary
練馬区が宣伝する「全国を先導する地域コジェネレーションシステム」。その実態は? 1億円近くになるかもしれない多額の税支出の一方で、使えるのは災害時の20kWだけ…


練馬区は、前川区政になって『練馬区エネルギービジョン』を取りまとめました。「自立分散型エネルギー社会の実現を目指し」「エネルギーセキュリティの確保と効率的で低炭素なエネルギーの確保という2つの観点から、エネルギー政策を総合的に展開しようとする」ものという位置づけです。
その『エネルギービジョン』の柱の一つ、「分散型エネルギーの普及拡大」のために重点的に取り組む事業の最初に、こんな記載があります。

(1) 全国を先導する地域コジェネレーションシステムの創設
災害拠点病院2か所と近隣の医療救護所が、それぞれ一体となった地域コジェネレーションシステム※を創設し、エネルギーの総合的・効率的な利用を推進します。

※コジェネレーション・システム=燃焼機関の排熱を利用して動力・温熱・冷熱を取り出し、総合エネルギー効率を高めるエネルギー供給システム(図)

コジェネレーションシステムは、エネルギー効率を高める手段として、また分散型エネルギー源の一つとして、さらには経費節減の手段としても、大きな注目を集めています。このコジェネレーションを核とした地域のエネルギー供給システム作りも広がっています。練馬区が「全国を先導する地域コジェネレーションシステムを創設」するとすれば、すばらしいこと。いいですね。楽しみです。ところが…

閉会した第3回定例会で、この「地域コジェネレーションシステム」の具体的な中身が議会に示され、関連経費を盛り込んだ補正予算も提出されました。私は、補正予算の質疑でこの問題を取り上げました。以下、そのやり取りです。(未定稿。正式な議事録ではありません)

池尻 地域コジェネレーション・システムの経費のところで、2,145万円が計上されています。これは、順天堂病院に設置されたコジェネレーション設備から石神井東中の体育館に専用ケーブル線を引くための費用で、このケーブルの敷設と合わせて、順天堂病院そのもののコジェネレーションの設備を更新するというお話がありました。この順天堂の新しいコジェネレーション設備の価格、それから区の補助額と財源の見込みを教えてください。
環境課長 コジェネレーションのシステム本体の更新につきましては、順天堂病院の方で来年度に更新を予定しており、本体がおよそ1億円程度、それに工事費といったところです。財源ですが、区が補助し、それ以外に国、都の補助金も考えております。
池尻 区の補助はどの程度、どういう考え方で当てるかを教えてください。
環境課長 順天堂の費用負担が半分程度になるような形での補助をしていければと考えております。
池尻 1億円プラス工事費、コジェネレーション設備の更新がこれくらいかかる。国、都の補助が順天堂に入ればまた別ですけれども、基本的には順天堂の負担を半分にする形で区は補助する。単純に言うと、もし、1億円を順天堂が支払うとしたら5,000万円を区は負担すると。この場合、区としての補助については、何か特定財源の当てはあるのでしょうか。
環境課長 一般財源で対応します。

順天堂病院には、今でもコジェネレーションシステムが設置されています。これを性能の良いものに更新し、それにあわせて、このシステムから石神井東中学校の体育館までケーブルを引き、病院の余剰電力を回せるようにする——これが、区の言う「地域コジェネレーションシステム」の骨格です。
しかし、順天堂病院から供給されるのは、20kw。家庭用電力1戸分に満たないほどの出力です。実際に、この電気は石東中体育館の照明とコンセントの電源分にしかなりません。しかも、電気を回せるのは、あくまで地震などの災害時に停電したときだけです。これだけのために、コジェネ機器の更新費助成で5000万円以上(国や都の補助金が入らない場合)、ケーブル敷設費で2,145万円、あわせると7,000万円を超す税金を投入するというのです。

システム導入に当たって区と順天堂が交わした協定書を取り寄せましたが、「システム全体」の維持費についても区が応分の負担をする、災害時に供給される電力も「有償」とも書いてあります。一つ間違うと、もろもろ合わせて区が負担する額は総額で1億円近くにもなりかねません。
はたしてこれは、正当で適切なことなのか?いったい誰のため、何のための事業なのか。病院のコジェネレーション設備の更新に多額の補助を受けられることになる順天堂にはありがたい話でしょうが、しかし、区民の大切な税金です。もっと効率的で効果的で、そして適正な事業の組み立てはあるはずです。

災害拠点病院でもある順天堂病院がコジェネレーションシステムを活用してエネルギーの効率を高め、セキュリティを充実させるのは大切なことです。しかし、それは、地域のシステムづくりとは別なことです。こういうのを竜頭蛇尾、羊頭狗肉というのでしょうか。看板とは裏腹に、税金ばかり飲み込む一方でなんとも貧相な「地域コジェネレーション・システム」です。

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