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石神井「再開発」は“適法”か④ ~「ピアレスは建ちません」~

石神井公園駅南の地区計画、さらにはその根底にあるまちづくりのコンセプトの中には、地区内に100mを超える建物が新たに立つことは想定されていませんでした。そのことは、地区計画に向けた検討を重ねてきた石神井公園駅南地区まちづくり推進協議会の議論の中でも、確認されています。2011年7月7日の第14回協議会では、こんなやり取りがされています。

委員 高さ制限は駅から公園に向けて高さが低くなるように設定したというが、道路幅員が広い幹線道路沿道エリアは空間的にゆとりがあるので高くし、道路幅員が狭い駅前は圧迫感があるので低くすると考える方が自然ではないか。駅前に集中して高い建物が建つと異様なまちに見える。
事務局 高さ制限については、建物の規模に関連する容積率を踏まえて設定している。例えば駅前や商店街は容積率が400~500%に設定されており、ある程度の高さを確保することで定められた容積率を使い高度利用できるように考えている。
委員 高さと容積率の関係は分かるが、ピアレスのような高い建物が建つのではないかと心配である。
事務局 地区計画ができれば建物の高さは35mに抑えられるので、今後はピアレスのような高い建物は建たなくなる。
                                (会議記録より)

協議会は区が設置したもので、事務局は 環境まちづくり事業本部 都市整備部 まちづくり推進調整課 (当時) が担っていました。ここで紹介したやり取りで直接、答えているのは、区の委託を受けて共同で事務局を担っていたコンサルタントですが、当然ながら、それは区の見解でもあります。

「地区計画ができれば建物の高さは35mに抑えられるので、今後はピアレスのような高い建物は建たなくなる。」

これが、少なくとも当時の区の説明でした。そしてそれは、地区計画や景観計画の内容を虚心に眺めれば、ごくごく自然に出てくる結論でした。ところが、今、区は何と言っているか。103mの再開発ビルが35mの高さ制限や景観計画等の考え方に照らして問題あるのではないかという批判を念頭に、地元の川澄議員(自民党)に促されるようにして、西部地域まちづくり課長はこう答えているのです。

「現在、駅直近に立っている建物のうち、駅北口の再開発ビルに関しましては地上33階建て高さ100mで、富士街道沿いに立っているマンションは地上25階建て高さ94mでございます。現在検討してございます南口西地区再開発事業による建物は、当初計画の段階では高さ130mでございましたが、周辺の建築物の高さを鑑み高さ約103m地上26階建てとしたものでございます。北口のピアレスと富士街道沿いのマンションのほぼ中間の高さであり、駅前の建物群の中で突出しない高さで設定したものでございます。」
西部地域まちづくり課長 2019.9.24決算特別委員会

ほとんど笑い話のような答弁です。35mを基準にしたときに想定されていたスカイラインに合っているのか、どうか。現に駅周辺にあるビル群の中で「突出」していないか、どうか。課長が答えなければならないのはこの問いであるはずなのに、実際には、一つは地区の端っこ、もう一つは地区外に立っている2本の高層ビルを引き合いに出して、似たようなものだ、「突出していない」と言うのです。

『石神井「再開発」は“適法”か』というこのシリーズの第三回(こちら)の投稿中の図をもう一度、見てください。この左端に100mのビルを置いてみたら、どうなるか。100mと35m。「駅から公園に向かって徐々に」低くなるスカイラインなどとは、どうひっくり返しても言いようがないでしょう。念のために記しますが、ピアレスのビルも富士街道沿いのビルも、地区計画の前に建築されたものです。これらのビルがあることを承知のうえで、それにもかかわらず、地区計画は35mを上限としました。地区計画や景観計画が念頭に置いた「ビル群」や「スカイライン」が、この超高層の2棟のタワーマンションを除いたものであることは明白です。そして、繰り返しますが、当時は区は「ピアレスのような高い建物はもう建たない」と明言していたのです。

区は、地区計画の高さ制限は変えればいいと言います。確かに、35mの制限を外せば、あたらしい再開発ビルは形式的には地区計画違反の批判を受けなくてすむかもしれません。しかし、景観計画は残ります。いや、それ以前に、もし地区計画を変えるならその根底にあった思想や理念——景観計画が明示し、また地区計画策定の中で確認されてきた街並みや高さ誘導の考え方そのものをどうするのか、責任をもって語るべきです。そうでなければ、都市計画審議会の部会で厳しく指摘されたように、計画論なき再開発、ルール無視の再開発という批判は、決して免れないでしょう。

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