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4500人と2500人 ~「非正規」公務員の制度改正(上)~

区議会第3回定例会は、週明けから決算審査も後半に入ります。決算以外の議案については、すでに委員会審査は終わっており、あとは最終日・本会議の議決を残すのみとなっています。

今定例会の議案の中で、やはり何といっても重い意味を持つのは「幼児教育・保育の無償化」と「会計年度任用職員」です。このうち「会計年度任用職員」は、これまでの自治体の非常勤職員・臨時職員制度を大きく転換させるものですが、結論から言うと、きわめて多くの「非正規」労働者に支えられた公務の現状自体は何一つ変わりませんでした。
今、練馬区にはたくさんの「特別職」非常勤職員がいます。「特別職」というのは、もともとは高い専門性を活かして助言、調査、診断等を担う職、各種の委員会の委員など「労働者性の低い職」を想定していたのに、自治体の現場では一般の常勤職員が担っているのと同様の職務を担う「特別職」がどんどん広がってきました。これを“適正化”するというのが、「会計年度任用職員制度」導入の大きな理由の一つでした。練馬区でいえば、例えば保育や図書館、清掃などの現場では、正規職員と並んで、正規職員と労働時間・日数以外には大差のない職務を担っている労働者がたくさんいます。その数、約1400人。まず問題になったのは、この1400人の身分取り扱いです。

練馬区は、これら1400人の「特別職」非常勤職員を基本的にそのまま「会計年度任用職員」に移行することとしました。実は、国は、少なくとも建前としては次の二つの条件を満たす職(「常時勤務を要する職」)については、原則として正規職員を充てるべきという見解を示していました。
(ア)相当の期間任用される職員を就けるべき業務に従事する職であること
(イ)フルタイム勤務とすべき標準的な業務の量がある職であること
国はこう言っています——「各地方公共団体における公務の運営においては、任期の定めの
ない常勤職員を中心とするという原則を前提とすべきです」(『会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル』)。
もしこの通りに考えれば、練馬区の「特別職」非常勤の職のほとんどは常勤職員が担うべきものであり、現在の非常勤職員の正規化、常勤化こそが最優先の課題であったはずです。何しろ、非常勤とはいっても、年度ごとに契約を更新されるだけでずっと働き続けている人は当たり前のようにたくさんいるし、週労働日数が正規より少ない(とは言っても週4日・月16日というパターンが最も多いのですが)のも、仕事がないからではなく、ただただ身分待遇上の差を正当化するために日数を制限しシフト制を組んでいるからであったからです。

しかし、1400人の「特別職」非常勤職員は、一人として正規職員にはなれませんでした。20年以上働き続けた人も、毎日のように頑張ってきた人も、「正規」への扉は開きませんでした。

もう一つ、臨時職員いわゆるアルバイトもまた、今回の制度改正で「会計年度任用職員」に移ることになります。こちらは、約1100人いるという説明です。これまで臨時職員は、こちらも雇用管理上の都合から年間の就労期間、月労働日数などを厳しく制限されてきました。本人の事情から短時間を望む人もいる一方で、半年ごとに異なる自治体現場を渡りながら何年も同様の仕事を続けているという人も少なくありませんでした。臨時の職自体も、仕事の内容としては常勤職員が担っておかしくないものが多く含まれますが、もちろん、臨時職の正規への移行などは話題にもなりませんでした。

「会計年度任用職員」としての任用は、来年4月から始まります。来年4月の時点では、練馬区は4500人ほどの正規職員と2500人に上る非正規の「会計年度任用職員」が支える自治体ということになります。4500人と2500人…異様です。

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