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図書館の「指定管理」 その4

ちょうどこの時期、国会では図書館法の改正案の審議が行われていました。5月末には衆議院で、6月に入って参議院で、それぞれ可決されたのですが、この議決の際に両院とも附帯決議をつけました。そのなかに、「指定管理」に触れた項目があります。衆議院の場合は次のとおりです。

一、国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し、検討すること

指定管理者の弊害」を、国会が公に口にしたことはこれまでなかったのではないでしょうか。参議院の決議でも、「弊害」が明記されています。決議は与党も含めて採択されたもの。少なくとも、図書館などの社会教育施設に関しては、指定管理の導入に否定的あるいは消極的な認識が国会の中ではここまで広がっているのです。
国会だけではありません。文部科学大臣も、答弁の中で要約、こう言っています。

渡海紀三朗国務(文部科学)大臣  …17年度社会教育調査によると、公立図書館への指定管理者制度の導入率というのは、まだ1.8%でしかない。その最大の理由は指定期間が短期であるために長期的視野に立った運営が難しいため図書館になじまないというか難しいということ、また職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなる、こういう問題が指摘されている。図書館に指定管理者制度を導入されるということであれば、そういった懸念が起こらないようにしていただいた上で導入をしていただくということが大事なのではないかなというふうに考えている。

図書館に指定管理は「なじまない」。「懸念が起こらないように」…文部科学大臣のこの答弁と、指定管理導入に走る区教委の軽々しく、節操のない様とのあまりのギャップは何でしょうか? 国会決議や大臣答弁でここまで言っているのですから、少なくともここで指摘されているようなさまざまな「懸念」や「弊害」についてきちんと検証し、検討するのは、教育委員会の最低限の責務でしょう。
指定管理を導入しようとする区教委の姿を見ていて、とても悲しい気持ちになります。経費節減の新たな方策を何とかして考えたい。区の「行革」方針に忠実に、新設館で新たに定員を増やすのはなんとしても避けたい。そう思っていることは、手に取るように分かります。しかし、まったく省みられていないこと、それは、図書館が「(社会)教育施設」であるということです。図書館は、無料の貸し本屋さんではありません。その根底には、国民の知る権利を支え、思想・表現等の権利を実体的に保障するというすぐれて公共性の高い、そして直接に憲法上の権利に触れる責務があります。いつの間にか、教育委員会はたんなる施設管理者になってしまったのでしょうか。そうは思いたくありませんが、しかし、そうとしか思えない今回の議案です。

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