「選択肢」で済まされるのか? ~ベビールームの死亡事故と練馬区~

区内東大泉にある認可外保育施設「若草ベビールーム」での死亡事故については、その後は報道もほとんどなく、「事故」の直接の原因や背景についての詳細も明らかにならないまま時間が過ぎています。とても気になることであり、とりわけ区が責任を負うべき保育基盤の整備という点からの検証は大きな宿題として残されたままです。

この問題で、先の議会で少しまとまった質疑をしました。10月10日の予算特別委員会、補正予算質疑の場です。私の前に、自民党の村上議員もこの問題を取り上げました。その質疑の中で、区が基本的な考え方、認識を次のように述べています。

「区としては指導権限は持っていない、都が所管をしている認可外保育施設とはいっても、区内の保育施設で今回、このような事案が発生してしまったということにつきましたは、区として大変重く受け止めております。今後の認可外保育施設への対応につきましては、練馬区の子どもの安全を確保するため、区として今年度中にすべての施設の保育状況を確認したいと考えてございます。」
「当該施設につきましては、現在、休園中でございます。詳細まで区として把握できているわけではございませんけれども、おおむね15人程度の方が定期的に当該園を利用されていたと聞いてございます。すでにほとんどの方からは保育課に対してご相談を頂いている状況でございます。この方々に対しましては、短期特例保育や1歳児1年保育の例外的なご利用のご案内、さらに本日締め切りとなってたございますけれども、11月入園申請を特例として延長して受け付ける、それから利用調整を行う際の指数につきましても在園施設が閉園した場合と同等の加点をさせて頂くなど、区としてできる限りのことはさせて頂きたいと考えてございます。」(保育課長)

「重く受け止めている」「(在園していた子どもたちのために) できる限りのことはしたい」という基本的な姿勢は、大切なものです。「事故」からすでに1ヶ月。今、15人程度と言われている子どもたちがどうしているか、とても気になっています。

このやりとりを受けて、私は質疑に立ちました。私がいちばん問いただしたかったのは、若草ベビールームでずさんな保育の実態が事実上、放置されてきたのではないかということ。そして、いったいなぜこうした認可外の施設に子どもを預けなければならなくなったのかということでした。
前者については、当該の施設が都からたびたびの重大な指摘を受けていたこと、是正報告書は出されていたものの都も区も是正が実際に行われていたのかを現場で確認はしていないことが明らかになりました。また、後者については、認可の施設・事業が不足していることが大きな背景にあるのではないかと問うたのですが、区の答弁は驚くべきものでした。

池尻
「この施設は、実は区のホームページでも紹介されております。認可外の保育施設一覧で紹介されております。そもそも、なぜこういう施設を利用なさるお子さんが、毎年、毎年出るのかということも含めて、私は大変考えるべきことが多いように思うのです。これは、例えば待機児童になった方に対して、認可外の保育施設の情報として、今回の事故が起きた施設も情報提供なさっていると思うのですが、こういう施設にお子さんを預けざるを得ない事情、預ける事情を区は、どのように認識していらっしゃいますか。」
保育課長
「人それぞれ、さまざまだと思います。認可外保育施設は、駅から比較的近くにある、それから保育が必要な理由を問わない、また在住、在勤などの地域にかかわらず利用できる、保育時間、保育日数について、柔軟な対応ができるなど、多くのメリットがあると認識はしています。そういった保育を望むニーズがあるということも認識しています。ということで、保護者が保育サービスを選択する際の選択肢の一つを担っている施設なのではないかと考えてございます。」

認可外保育施設は「保護者の選択肢の一つ」だ——これが区の認識です。認可の保育基盤が質量ともに不足しているという基本的な問題を横において、まるで保護者の保育ニーズにこたえるためには認可外も必要だと言わんばかりの、そして保護者がみずからの「選択」において若草ベビールームを選んだかのようにいうこの認識は、正当で根拠のあるものでしょうか?
答弁で区も認めたように、若草ベビールームに預けられた子どもたちの少なくとも「概ね半数」は認可保育にも申し込んでいました。私がお話を聞いた何人かの保護者も、認可を望み、あるいは認可に入るステップとしてここに預けていた方たちでした。そして多くの保護者は、ここが「認可外」であり、行政の指導も行き届かず、責任も問われることのない施設であることを知っていたら、もっと違った「選択」を望んだに違いありません。
公けが責任を負う認可の保育基盤がなお不足している、整備が立ち遅れていることを省みようとしないだけでなく、ベビールームや企業主導型保育まで「選択肢」だと言う。これでは、認可外保育施設の劣悪な保育環境には決して真剣なメスは入らないし、今回のような痛ましい「事故」も決して後を絶たない。私はそう思います。

質疑の全体を採録します。録音から起こしたもので、正式な議事録ではありません。


○池尻成二委員 先ほど来、区内の認可外保育施設で起きた死亡事故について、やりとりがありました。その質疑を踏まえて、少し聞かせていただければと思います。
 先ほど答弁で、大体15人くらいのお子さんが預けられていたというお話だったのですが、その中で0から2歳のお子さんがどのくらいいたのか。それから、15人ほどの子どもたちが、今、新たな適切な保育の場所を確保できたのかどうか。この点をまずお聞かせください。
○保育課長 年齢の詳細といいますか、そのあたりについては、区で十分把握できておりませんので、正確な数字は今申し上げられないような状況でございます。
 今、在園している方が、どのような状況かというお話です。
 先ほどの答弁でもご説明させていただきましたが、15人中ほとんどの方が、区にご相談に見えられていて、先ほど申し上げたような、あらゆる手段を使って、その方のご相談に応じているという状況でございます。
○池尻成二委員 相談に応じていることは、先ほどご答弁を聞いていたのですけれども、実際に保育の場、今日明日から保育に欠けているわけですから、保育の場が確保できたのかと思って、お聞きしたのです。状況はどのような感じですか。
○保育課長 お一人、お一人、それぞれ、いろいろな状況がございます。お住まいになっているところも異なりますし、対象年齢も異なるということで、それぞれに合ったご相談を受けて対応している。1歳児1年保育を例外的にご案内したり、短期特例保育をご案内したりといった状況でございます。
○池尻成二委員 先ほど11月入園の申請締め切りを例外的に延ばすことを考えられたとか、努力していらっしゃると思います。
 ただ、大切な子どもたちの命にかかわることでもありますし、突然保育の場を失ったご家族に、一日お早く安心してもらえるように、積極的な相談対応と迅速な保育先の確保に、区としても、さらにしっかり努力していただきたいと思います。
 改めて、基本的な区の姿勢をお聞かせいただければと思います。
○保育課長 短期特例保育、1歳児1年保育の例外的なご利用のご案内、さらに本日締切になってございます11月の入園申請を特例として、延長して受け付ける、指数の加点ということで、区としてできる限りのことはさせていただきたいという認識でございます。
○池尻成二委員 先ほど、昨年9月に区も同行して現場に入られたというご答弁がありました。そのときに、何か改善すべき事項とか、気がついたことはあったのでしょうか。
○保育課長 東京都と、こちらも回らせていただいたのですけれども、東京都では、細かい改善事項は、いくつかあったという認識でございます。
○池尻成二委員 これも先ほど来、若干言及があったのですが、今年1月に実地検査がやられた。そのときの文書による指摘事項を見ると、必要な保育従事者数が不足しているとか、一人当たり必要面積が不足しているとか、決して小さなことではない指摘事項が幾つも入っています。
 それぞれ、是正報告書が来ているということで、先ほどお話がありました。これは、報告書上は是正されたことになっているけれども、現場では、実際に是正されているかどうかの確認をされたのかどうか、改めて教えてください。
○保育課長 これは東京都に確認したことですけれども、現場に入る予定ではあったけれども、現場に入って確認していないという話でございます。
○池尻成二委員 指導検査は、社会福祉施設に関する指導検査のようで、毎年やっていらっしゃいます。去年1月に行われている実地検査の結果と、このときも文書による指摘があったのですけれども、比べてみますと、例えば、一人当たりの面積が不足しているとか、調理に携わる職員の検便が実施されていない。こういった項目は、毎年是正済みとなっているのだけれども、続けて繰り返されているのです。私は、こういう状況があったということは非常によろしくないと思います。
 文書による報告はあるのだろうけれども、また同じことを翌年度、是正の指摘をされる。極めて保育の質の基本にかかわる点について、こういう指摘が繰り返されていること自体が、この保育事業者の大きな課題を、実は浮き彫りにしていたのだろうと改めて思います。
 この施設は、実は区のホームページでも紹介されております。認可外の保育施設一覧で紹介されております。そもそも、なぜこういう施設を利用なさるお子さんが、毎年、毎年出るのかということも含めて、私は大変考えるべきことが多いように思うのです。
 これは、例えば待機児童になった方に対して、認可外の保育施設の情報として、今回の事故が起きた施設も情報提供なさっていると思うのですが、こういう施設にお子さんを預けざるを得ない事情、預ける事情を区は、どのように認識していらっしゃいますか。
○保育課長 人それぞれ、さまざまだと思います。
 認可外保育施設は、駅から比較的近くにある、それから保育が必要な理由を問わない、また在住、在勤などの地域にかかわらず利用できる、保育時間、保育日数について、柔軟な対応ができるなど、多くのメリットがあると認識はしています。
 そういった保育を望むニーズがあるということも認識しています。
 ということで、保護者が保育サービスを選択する際の選択肢の一つを担っている施設なのではないかと考えてございます。
○池尻成二委員 保護者の選択肢の一つだから使われていると今おっしゃったけれども、これは、およそリアリティのない認識です。
 聞きますけれども、15人ほどの子どもたちの大半はアクセスしていただけているとおっしゃいました。当然、名前もわかるのでしょう。 15人ほどのお子さんの中に、認可保育所の申請をなさっていたお子さんは、どのくらいいますか。
○保育課長 詳細まで、今手元で把握しているわけではございませんけれども、概ね半数近くの方が、お申し込みはされていたのかと思います。
○池尻成二委員 私は、在籍していた方から、直接お話しすることができました。その方のお話を聞いていて、認可外保育施設は、もちろん認証も認可外ですけれども、認証はまた違った環境と条件の中にあるから違うと思います。それ以外の認可外のベビールーム系の施設については、こういう実態なのかと、本当に驚くようなお話がたくさん出てきました。その方も実は、今年4月の認可の申請のときに待機になった方でした。行くところがなくて、この事故が起きたベビールームに子どもを預けた。そういう方は、いらっしゃるわけです。それは選択の問題ではない。待機になったから行く場がなくて行っているわけです。そのことは率直に受けとめないと、それは次の課題に向かって進んで行けないと思います。
 実際に、もし本当に認可の受け皿がしっかりあって、あるいは認可外の施設の適切な情報の開示がしっかりあったら、私は今回のような施設に子どもを預けようと思う親は、限りなく少なかったろうと確信します。
 そのことを前提に、これからの保育施策を進めないといけないのではないか。
 私は認可の保育所・事業の整備が追いつかない中で、こうした認可外施設に頼らざるを得ない現実が、必ず一面ではある。そのことをしっかりわきまえて、今回の事故の教訓を生かしていかないといけないと思います。
 その点て、私は認可施設の整備、安心して預けられる、条例の基準がしっかりかかる、区の指導がかかる、そういう認可の保育施設をきちんと整備する。そのことが今回の事故に対する最大の区としての責任の果たし方だと思います。
 その点についての認識をお聞かせいただければと思います。
○保育課長 先ほど申し上げましたけれども、ご利用されている方の事情は、さまざまだと思っています。保護者が保育サービスを選択する際の選択肢の一つと考えてございます。
 保育所に入れなかった方が、ご利用されているとおっしゃられましたけれども、一方で、定員が需要と供給で1,160供給が上回っているという現状もございます。
 地域ごとのミスマッチ解消のために、今後も区として取り組んでまいりたいと考えてございます。
○池尻成二委員 話がすれ違われてしまったかと聞いていました。
 私は認可の施設を基本とした保育基盤の整備というものの正道をきちんと歩くことが、今回のような事故を防ぐ一番の原則だと思います。

|2018-11-07T12:51:58+00:002018年11月7日|コメント(0)

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