交通量推計のこと② ~156号線の説明会から~

『東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)』は、都と23区、都下の市町村が共同で取りまとめたものです。この計画を策定する作業に先立って、都は調査委託をかけ、交通量推計などの基礎的な資料を取りまとめています。その中で、156号線に関連のある区間の推計を取り出してみました。あわせて、国が行っている道路交通に関する体系的な現況調査『道路交通センサス』のデータも参照してみました。

まず、この表の数字を見る際にあらかじめいくつか注意点を。
①「4次推計」の欄中の2016年は、現況の再現性を検証し調査手法の有効性を確認するために出された推計値です。実際の交通量ではありません。
②「交通センサス」は現況を実測しての調査ですから、まだ道路が出来ていないところは数値が入っていません。
③「156号線・学園通り西」が、今回、事業課に向けて動き出した区間に当たります。
④「放射7号・北園交差点西」は、現在、事業中の区間です。
⑤数字はすべて24時間当たりの台数です。もともと交通センサスで測定しているのは7時~19時の12時間の台数なので、24時間当たりに換算しています。換算にあたっては「昼夜率」を用います。これは、24時間交通量/12時間交通量の割合を道路ごとに推定したもので、12時間台数×昼夜率が表中の数字になります。(昼夜率自体も交通センサスで公表されています)

さて、数字です。

まず驚くのは、推計が現況とあまりに異なっているということです。156号線の学園通り東側、つまり大泉街道の現道部分の交通量は、2016推計では13,000台ですが、実際にはセンサスでは7,000台を少し超える程度です。ほぼ倍近いという誤差です。放射7号の北園から東も、センサスの実測23,000台に対して推計では39,000台近くと、こちらも1.7倍も誤差があります。156号の学園通り東側、いわゆる大泉街道部分に至っては、現況の推計値はセンサスの実測値の5倍近いという驚くような数字になっています。推計は、都市計画道路の交通量をきわめて過大に評価していると言わざるを得ません。今回の事業対象である156号線の学園通り西は、将来推計では3万台近い交通量になりますが、もしこの推計が合理的であればとても2車線では足りない、目白通り並みの4車線にしろというおよそ滑稽な話になってしまいます。

都市計画道路の交通量を過大に評価している一方で、推計は、都市計画道路以外の主要な道路の交通量をきわめて一面的に推計しています。保谷駅南口に抜ける233号線は、都市計画はかかっていませんが都道であり、広域の道路交通ネットワークに位置づけられる道路です。この233号線の交通量は、将来は「0」。つまり、233を通る車はすべて156などに移るという推計です。この通りなら、233号はいらなくなるというこれまた滑稽な結論になるのですが、それだけ精度も再現性も低い推計しかしていないということです。

こんな推計しかない中で、新しい都市計画道路の整備の必要性を根拠づけることは不可能です。説明会では、156号線の整備による道路交通面の意義・効果として、したみち通りや233号線の交通量が分散されること、生活道路への通過交通の流入を抑えることなどもあげています。しかし、これらも具体的な根拠は示されないままです。したみち通りについて言えば、放7の整備で交通状況は大きく変わる可能性があります。また、233については、交通量自体が格段に多いから問題になっているわけではなく、むしろ、道路幅員の不足、踏切渋滞などが主要な交通課題となっています。そもそもこの道は都道なのですから、交通安全対策などを主旨とした道路拡幅、あるいは鉄道の立体交差化事業の延伸などにもっと責任を持って都は取り組むべきではないでしょうか。富士街道などは、都市計画道路ではありませんが、安全対策などを目的として順次、拡幅が進んています。233号線だって、できないことではないでしょう。生活道路への通過交通の流入についても、写真まで紹介されていますが、これも本当に通過交通なのか、それとも地域内に起終点を持つ交通なのかは判然としないままです。

道路整備に付随する他の効果、防災や緑、歩行環境などもいつものこととして挙げられてはいますが、これらは決して都市計画道路の整備によってしか実現できないものではありませんし、都市計画道路以外の手法の方がより効果的に達成できるものも多々あります。緑の保全などは、都市計画道路の整備が開発を誘引し、地域の緑喪失に拍車をかける懸念さえあります。
道路は道路であり、自動車交通の処理という点での必要性が検証され確認されることは、事業の大前提です。交通処理上の機能、意義、効果というこの基本の基本で、156号線説明会での都の説明は極めて不十分なもでした。4車線以上の道路整備事業の場合は環境アセスメントが義務付けられ、その際は、個々の路線・地域に即した詳細な交通量推計があらためて行われています。今回の156号線は2車線ということで、環境アセスの対象ではありませんが、地域の理解を得るためには同様の責任ある推計調査を行うことも検討されてよいでしょう。

地域のまちづくりへの影響、交通処理上の意義など、説明会は、肝心な点で明確な回答がないままに終わりました。都・四建は、あの説明会で良しとするのでしょうか。地域には、納得できていないという声が数多く聞かれます。いずれにしても、このまま測量に入ることは許されない。私は、そう考えます。

|2018-10-28T00:16:03+00:002018年10月25日|コメント(0)

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