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「育休」は二転三転 ~「待機児童」はいったい何人? ⑥~

認可保育所等を希望しながら入れなかった子どもたちの数から、様々な形でたくさんの人数が除かれていくわけですが、その中で最近、特に目立つのが「特定園のみ希望」と「育児休業を延長」という類型です。今回は育児休業の取り扱いについて。

育児休業中の保護者がたとえは新年度4月から認可保育所等への入園を希望する。それ自体はごく当たり前にあることです。妊娠・出産でいったん退職する人ももちろん少なからずいるはずですが、育児休業制度の整備が少しずつ進んできたこともあり、育休からの復職にあたっての保育保障は大きな課題となっています。しかし、保護者が育児休業から職場への復帰を考えていても現実には希望する認可の保育所等に入れず、やむを得ず育児休業を延長する人たちが増えてきていました。この場合、その子どもたちを待機児童としてカウントするかどうか。実は、この扱いが二転三転してきたのです。
2014年度までは、育児休業を延長した(できた)人も待機児童にカウントされていました。しかし、2015年度から、待機児童から外れます。その後、育児休業を延長した人の中でも「保育所等に入所できたときに復職することを確認できる場合」は待機児童としてカウントすると、定義がさらに変更されました。練馬区はこの新しい定義を2017年度の待機児童数から適用しています。あらためて待機児童から除外された「育児休業を延長した数」を確認してみます。(表)

今年度、2018年度で見ると、希望する保育所等に入れずに育児休業を延長したとされる数は①の172人。そのうち、復職の意思ありとされた人を除いて②の126人が待機児童から除外されています。では、どうやって「復職の意思」を確認するか。「復職の意思」を確認するアンケート調査はこうなっています。

問 平成30年4月1日時点での復職に関するお考えについてお伺いします。該当する者のいずれかに☑をしてください。
▢ 保育園等に入園できたら、復職します。
▢ 申込時は保育園等に入園できたら復職するつもりでしたが、育児休業延長により、現在は復職を希望していません。
▢ その他 (                                                            )

もしあなたが、保育所等に入れずやむを得ず育児休業を延長したばかりだとしたら、果たして「入園できたら、復職」を約束できるでしょうか。本当は復職したい、でもいったん育児休業を延長した以上、空きが出たからといってそうそう簡単に切り上げるわけにはいかない…そんな判断をした人も、きっと少なくないと思われます。そもそも年度途中で2歳になった時点で育休は切れてしまうのですから、育休延長は復職の選択肢としては大きなリスクを抱えたままです。

今年度(厳密には昨年10月)から、保育所等に入れなかった場合には育児休業が最大で2歳まで可能となりました。誰もがその選択に応じて2歳までの育児休業を保証されているわけではなく、あくまで、保育所等の待機になったことなどが条件です。そのため、育児休業を延長するために、つまり本当は復職する意思はないのに、保育所等の申請をした人が一定数、いるのではないかということも言われています。
確かに、2017年4月では育児休業延長は0歳児の方が多かったのに、2018年4月では1歳児の方が多くなっています。制度改正が反映した数字だとは言えそうですし、もともとの172人がどれほど強く保育を必要としていたかについては、検証の余地はあるかもしれません。しかし、「復職の意思」の確認の仕方を見ても、7割以上(126人÷172人)の人が育休延長のためだけに保育の申請をした(もともと復職の意思はなかった)とはとても言えないでしょう。そして、そうした人たちも待機児童から除かれ、保育のニーズとしては“無かったこと”にされてしまうのです。

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