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「認可」と「認可外」 ~「待機児童」はいったい何人? ②~

待機児童?  保育所に入れなかった子どものことでしょう??

たぶんこれが“普通”の理解でしょう。ところが、この“普通”の理解は、真実とは程遠いものです。例えば、冒頭のグラフを見てください。上の折れ線は「認可保育所等に入れなかった者」の人数です。ところが、これはいわゆる「待機児童」の数ではありません。公認の「待機児童」の数は、下の折れ線です。二つの折れ線はずいぶんと、いや、まったく異なっているだけでなく、その乖離は年とともに広がっています。「待機児童」の数は、「認可保育所等に入れなかった者」の数からどんどん離れて行っています。

少し整理をしておきます。「保育所」と普通、言われるのは、認可保育所のことです。児童福祉法にはこうあります。

第39条 保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設…とする。

児童福祉法や関連する法令は、この保育所について様々な条件を定めるとともに、保育所を開設する際には都道府県知事の認可を受けなければならないとしています。つまり、保育所とは、法律上は認可保育所のことです。その後、子ども・子育て支援新制度が2015年度にスタートし、それまでは認可外であったいくつかの事業(「家庭的保育」や「小規模保育」など)が「地域型保育事業」として認可に基づく公的な位置づけを与えられることになりましたが、いずれにしても認可が基本であることには変わりはありません※。

※このほか新制度で位置づけられた認定こども園についても、「認可保育所等」に含まれています。現在、区内には幼稚園型が3園あります。「練馬こども園」は、名前は似ていますが、法律に位置づけられた認定こども園ではありません。(6/19追記)

グラフにも書いてある「認可保育所等」の「等」とは、この地域型保育事業や認定こども園のことを指します。児童福祉法や子ども・子育て支援法では、この認可・認定の施設・事業で保育を行うことを原則としています。「認可保育所等に入れなかった者」とは、認可された保育所や地域型保育事業などを希望しながら、そのいずれにも入れなかった子どものことです。この子どもたちの数を、仮に本来の待機児童と呼ぶことにします。本来なら、「認可保育所等に入れなかった者」が待機児童として扱われてもおかしくなかったのです。実際に、2000年前後まで、練馬区もこの数字を待機児童数として扱っていました。ところが今や、行政が公表する「待機児童」数は、まったく違う数字となっています。たとえば今年度、2018年4月の数字で見れば、「認可保育所等に入れなかった者」は978人、他方、区が公に認めている「待機児童」はわずか79人。その差は900人、なんと9割以上が待機児童から外れてしまっています。

まずはここに、「待機児童」をめぐる大きな混乱と誤解の出発点があります。

「保育所等に入れなかった者」の推移を見ておきます。2000年代に入って右肩上がりに増え続け、一時は1,000人を超えました。2015年に一度、ガクッと減っていますが、実はこれは見かけだけの現象です。つまり、この年に「地域型保育事業」が創設され、それまでは認可外となっていた家庭的保育などが制度上、認可内に移行したために、見かけ上、「保育所等に入れなかった者」が大きく減って見えるのです。2014年度と2015年度を比べてみると、この減少は200人近くに上ります。その後もまた再び右肩上がりに増えていることを考えると、この15年近く、本来の待機児童はほぼ一貫して増え続けてきたと言っても過言ではありません。この間、国も各自治体も「待機児童」解消を繰り返し繰り返し口にし、保育所などの増設を進めてきました。その努力は決して小さなものではありませんでしたが、しかし、本来なら認可保育所等で保育を受けられるべき子どもたちが4桁の単位で保育を受けられずに来た、しかもその数が減るどころか増え続けてきたという意味では、「待機児童」対策は失敗に終わったのです。

結論を急ぐ前に、「認可保育所等に入れなかった者」と「待機児童」はなぜ、どんな仕掛けでこれほどに乖離してしまったのか、少し詳しく見ていきます。(続く)

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