Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

深刻な隘(あい)路に ~外環自動車道の「再評価」始まる~

外環道(東京外かく環状道路)の関越道~東名道区間について、事業の再評価の手続きが始まっています。外環道については関東地方整備局が再評価の主体になりますが、その再評価をチェックするのが事業評価監視委員会です。

事業評価とはそもそも何か。『国土交通省所管公共事業の再評価実施要領』には、再評価の目的がこう書かれています。

公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るため、再評価を実施する。再評価は、事業採択後一定期間を経過した後も未着工である事業、事業採択後長期間が経過している事業等の評価を行い、事業の継続に当たり、必要に応じその見直しを行うほか、事業の継続が適当と認められない場合には事業を中止するものである。

「再評価」の結果、公共事業の見直し、もしくは中止もありうる。そう書かれています。そして、この再評価にあたっては事業評価監視委員会という第三者委員会の意見を聴かなければならないことされています。事業評価監視委員会の役割は、「再評価の実施手続きを監視し、当該事業に関して再評価の実施主体が作成した対応方針(原案)に対して審議を行い、不適切な点又は改善すべき点があると認めたときは、意見の具申を行う」ことです(上記『実施要領』)。

再評価の対象となるのは、事業採択から3年以上未着工の直轄事業、再評価から5年間を経過した事業などとなっています。外環道が事業化されたのは2009年5月。その後、最初の再評価が2013年に行われ、2016年に2回目の再評価、そして今回が3回目となります。もともとは事業認可期間は2020年度まででした。今回は「想定外」の再評価、ということでしょうか。それは、当然ながら認可期間の延長を行うにあたっての前提でもあります。

事業評価監視委員会は7月30日に開催されています。この日の資料等は、こちら から確認することができます。開催結果の報道発表によると、事業者としての国交省は「事業継続とする」という『対応方針(原案)』を用意していました。しかし、この日の委員会では原案の承認にまでは至らず、「次回の委員会で引き続き質問への回答と審議を行う」こととなったようです。過去の経過からすると、これ自体が異例のことです。前2回の再評価では、その日のうちに原案は了承されています。

委員会が次回に結論を送った理由は、議事録が公開されていないので確認できません。ただ、容易にそのまま「継続」を認めるにはあまりに大きな課題が明るみになってきたことは間違いありません。国交省が用意した資料を一読するだけで、外環道事業が深刻な隘路に立っていることがわかります。少し数字を拾ってみます。

下の表は、3回の事業評価のたびに「事業費」がどう変わってきたかを整理したものです。事業費は、簡単に言えば、外環道の整備に係る経費の全体ということになります。用地費のほか、工事費あるいは設計費なども含まれます。

事業化された当初、2013年の見積もりでは、総事業費の見込みは1兆2,000億円でした。それが、2回目の再評価の際には2,600億円も増えて1兆5,000億円に。その時もたいそう驚いたのですが、今回の再評価ではさらになんと7,000億円近くも事業費が増大しているのです。当初から比べると、ほぼ1兆円、率にして76%もの激増です。わずか16kmの道路についに2兆円!! 率直に言って、異様な事業費の膨張です。

しかし、いったいなぜここに来てこれほど事業費が膨れ上がってしまったのでしょうか。そして、これだけ経費が膨らむ中で、はたして公共事業としての意義や必要性はきちんと確認できるのでしょうか。(続く)

コメント