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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「検査」拡充へ、次のステップ ~『緊急要望・提案』への回答~

7月28日、「新型コロナ」対策に関する緊急の『要望・提案』を区の所管部あてに提出したことは、既報の通りです。

→『地域におけるCovid19拡大防止のための緊急の要望・提案』は こちら

具体的に要望・提案した項目は次の5つです。

1. 唾液検査を用いた地域診療所での行政検査体制の充実に加えて、区としての独自のPCR検査・検体採取体制を再構築すること。その際、保健所を介さないシステムとするよう配慮すること
2. 保健所が積極的疫学調査に人員と資源を重点的に投入できるよう、業務及び体制の見直しを図ること。軽症もしくは無症候陽性者の療養と医学的管理の体制を整えるために、区としても積極的な取組を行うこと
3. 検体採取のみならず、PCR検査を独自に担える設備・人員体制を確保すること。その際、検査機器・技術の最新の展開を積極的に取りいれること
4. 地域におけるCovid19拡大防止対策を総合的・戦略的に進めるために、区内の中核医療機関、区医師会、地域外来・検査センター認定医療機関などで構成される連絡・協議の場を設置すること
5. PCR検査の対象について、これまでの行政検査の範囲にとらわれず、積極的な陽性者の拾い出し、感染拡大の未然防止、事業の継続・早期再開を目的として、抜本的に見直すこと。

月を超えて3日、健康部長が所管部としての考えを持って訪ねて来てくれました。1時間ほどあれこれ話をしましたが、部長の認識、“回答”の骨格を整理をして紹介します。

「検査の紹介に応じてくれる医療機関には支援をする」

区は、光が丘の小学校跡地に5月の連休明けから開いていた検査・検体採取センターを6月いっぱいで閉鎖、7月からは、都の認定を受けた地域の一般医療機関(診療所)が「地域外来・検査センター※」として唾液を使った検査をするという体制に移りました。

※地域外来・検査センター 新型コロナ感染者やその疑いのある患者に対する検査や外来診療を担う医療機関は、都道府県が指定した「帰国者・接触者外来」に限定されてきた(区内には、現時点で4カ所)。しかし、感染者等が急増する中で検査や初期診療の体制強化を迫られる中で、行政検査を集中的に実施する医療機関を都道府県が「地域外来・検査センター」として認定する仕組みを設けることとした。

このPCR検査の“新体制”については、「認定を受けた診療所は100か所くらいにはなりそう」だが、「自院以外を見てくれるところが想定を下回り、広く薄く紹介枠を設けてくれないかとお願いしている」状況だとのこと。自院のかかりつけ患者以外の紹介に応じるとしている医療機関は、この時点で10カ所を少し超える程度とのことでした。
日頃かかりつけにしている医療機関があり、かつその医療機関が「地域外来・検査センター」としての認定を受けていれば、そこで検査を受けることが可能です。しかし、そうでなければ、①かかりつけの医師から医師会の連携センターにつないでもらい、そこで検査可能な医療機関を紹介される、あるいは②練馬区のコールセンターに電話をし、そこで検査可能な医療機関を紹介をしてもらうという流れになります。感染が広がれば広がるほど、この二つのルートをたどるケースが増えてきます。そして、紹介を受ける医療機関が少なければ、当然、検査が必要だと保健所や医師会が判断しても検査を受ける場所がないという事態が生じてしまいます。

区のコールセンターや医師会の連携センターを通して紹介するという検査の流れが滞る恐れがあることは6月の議会で私も指摘したところですが、部長もこの“目詰まり”があること、その解消が喫緊の課題であるという認識は持っていました。具体的な対応についても、「紹介による検査に支援を付けることで、インセンティブにしたい。いざとなったら(正式な補正予算を待たず、既存予算の)流用でも対応したい。近々動く」と明言しました。すでに、医師会を通して認定医療機関には話が入り始めているようです。

独自の検査センターも再設置へ

また、検査体制の拡充という点では、医療機関をベースにした体制だけでなく、独自の検査センターを設けておくことはぜひとも考えるべきことです。それは、個々の医療機関の受け入れ能力や意向に依存しない検査(検体採取)能力の確保のためにも、また保険診療のベースに乗りづらい検査を実施する受け皿としても、きっと役に立ちます。
この独自の検査センターの再設置についても、部長からは「基本的に前向きに考えている」という返事がありました。

「新しい体制で1日100件を当たり前に取るようになり、能力で行くとセンターのときに比べて飛躍的に増えている。ただ、コールセンターや医師会の連携センター経由の紹介の目詰まりがある。この先感染の広がり、発熱患者の増加などを踏まえてリソースの拡充を検討する必要がある。検査センターの再設置については、補正予算のタイミングなどもあるが、基本的に前向きに考えている。これから検査が増えていく中で、検査ができる場所を自分たちで持っておきたい。」

自前の検査設備は「難しい」

PCR等の検査は、実は検体の採取と検査という二つのステップに分かれます。検体採取の体制は医療機関レベルでもそれなりに整いつつありますが、検査自体は今のところ都の健康安全センターか民間の検査会社に頼むしかなく、安定的な検査体制という点では少なからぬリスクを抱えています。そこで「PCR検査を独自に担える設備・人員体制を確保すること」を要望しておいたのですが、これについては、「保健所の施設のバイオセーフティーレベルが不十分なので、難しい」という回答です。部長によると、区の保健所の施設はバイオ・セーフティレベルで「1と2の間くらい」で、これでは検査はできないと言います。

「よほど民間検査会社の活用が限界に来たら必要かもしれないが、いまはそうではない。区でやると言っても場所もないし、やらせる技師自体が3人くらいしかいない。区の最大検査数は500件と見込んでおり、検体採取まではできる。検査は他人頼みだが、そのうちたとえば30件を区でやると言ってもどれほどの足しになるのか。即日で結果ができるというメリットはあるがね数をこなすのがまずは命題。」

部長はこうも言っていました。現実に基礎自治体の単位で独自の検査体制を取るところが相次いで出てきている中で、施設面の制約を理由に民間検査会社に検査をゆだねる体制のままでよいのか? 一般企業などが私費での検査を大規模に取り入れる動きが広がる中で、検査機関の奪い合いのような事態が出てくることもあり得ないことではありません。検査の効率化・迅速化という視点も含め、自前の検査体制の必要性は確かにあると思います。ここは、姿勢の違いが残りました。

保健所の体制は?

7月の区議会保健福祉委員会では、担当の課長から「22時、23時まで職員が残っている」という答弁がありましたが、保健所の体制の問題は対策の妙手が乏しく、深刻です。すでに「コールセンターは派遣の事務職が電話を取っている。地域診療所の紹介をする場合は保健師にコールバックするが」という状態。保健相談所が乳幼児健診などの一般の保健所業務を再開する中で、3,4月のように保健師の応援態勢を組みづらくなっているのも対応を難しくしています。
部長からは「そもそもこの疫学調査をいつまでやるのか、感染対策の基本的なスキームに触れる議論をすべき時期ではないか」という話も出ました。確かに、市中蔓延という状況になれば、個々の感染ルートを追い続けることは不可能であり、感染対策としての意義も事実上、なくなっていきます。感染の広がり、そして個々の陽性者の聞き取りや濃厚接触者の把握・フォローに大きな力を割かざるを得ない現状をふまえた認識だとは思いますが、しかし、現実には施設内・院内感染や地域におけるハイリスク集団への感染伝播の抑止など、保健所の疫学調査の役割はいまだ大変大きいはずです。陽性者の入院・療養に関わる業務、PCR検査の手配・コーディネートの業務など、整理し簡素化できるものは多いのではないか。この点は、具体的な業務の検証も含めた議論をぜひとも深めたいところです。

関係者の協議の場は「やります」

4つめの項で求めた関係者の連絡・協議の場については、「会議体はやる。4月に一度、接触者外来を開いている病院、医師会、歯科医師会、薬剤師会で会議を持った。それを再開する。」との回答でした。これは、とてもよいことです。「随時開催」になりそうとのことでしたが、ぜひ定期化してもらいたい。また、帰国者・接触者外来の4病院だけでなく、新たに検査を担うことになった地域の診療所の代表も入れた方がよいと提案しましたが、これについては、意義は理解しつつも「医師会を通しての話になる。誰を呼んでくれとはなかなか言えない」とのこと。ぜひ医師会と話を進めてもらい、積極的に検査を担ってくれている意欲ある現場の医師をまじえた会議体にしてもらいたいと要望をしておきました。

検査の対象者

最後に、これが今回の『要望・提案』の中ではもっとも重きを置いたものでしたが、検査対象の拡大について話をしました。この点では「厳密に濃厚接触者だけと厳格に狭めて否定的に考えてはいない。何でもやりますよと大風呂敷を広げるつもりはないが、なるべく広げた方がいいとは考えている」との説明がありました。前向きの姿勢と受け止めますが、問題はどこまで広げるかということです。
部長は、繰り返し、国が示している行政検査の範囲の第4類型をベースに考えると言います。この類型は、いわゆる無症状の濃厚接触者の検査を可能にするために設けられたものですが、その後、さらに範囲が拡充され、濃厚接触者であるか否かに関わらず一定の条件を満たせば検査をかけられる仕組みとして、かなりなし崩しで拡大解釈が重ねられてきているものです。

※新型コロナウイルス感染症に係る行政検査に関するQ&Aについて 2020.07.15 新型コロナウイルス感染症にかかる「行政検査」の対象者としては 、感染症法第 15 条第1項・第3項第1号 より、 ①新型コロナウイルス感染症 の 患者 ②当該感染症の 無症状病原体保有者 ③当該感染症の 疑似症患者 ④当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者 となっております。 上記 ④ については、 例えば……「 濃厚接触者」が 該当する ことをお示ししていますが、 必ずしもこれに限られず、以下のような者についても④に該当すると考えられます。 特定の地域や集団、組織等において、 ・関連性が明らかでない患者が少なくとも複数発生しているなど、検査前確率が高いと考えられ、かつ、 ・濃厚接触を生じやすいなど、クラスター連鎖が生じやすいと考えられる状況にある と認められる場合における、当該地域や集団、組織等に属する者

この類型を柔軟に使うのは、一つの方法としてしっかり進めてもらいたいところですが、しかしこの類型にも入りきれないものが様々あります。介護や保育など、いったん感染が入り込めば一気に拡大するリスクのある現場での従事者、利用者の一斉検査などはその最たる例です。『要望・提案』で検討を求めたのも、この部分です。

この点に対する部長の見解は、「財政的な裏付けが必要」「費用対効果を見極めないと」というものでした。確かに、介護や保育の従事者だけでも何万人といます。感染状況などに関わりなくこの従事者全員に検査をかけるとすれば、現在の診療報酬単価を前提に単純に計算すれば1回分だけで数億円の支出になります。しかもそれを繰り返し行わなければ意味はなく、そうすると財政的には大きな決断が必要です。従事者だけでなく利用者、あるいは子供たちまで対象にすれば、さらに大きな負担になります。
部長の言葉を借りれば「大風呂敷」はいりません。考え方や優先順位を整理しながら、財政的な負担についても率直かつ透明な議論を行ったうえで、検査の範囲を広げていく。それで十分です。私からは
①感染者が出た施設・事業所での検査範囲の拡大。とりわけ障害者施設、保育施設、学校など速やかな事業の再開・継続、あるいは代替的な支援が求められる場所での幅広い検査
②重症化リスクの高い要介護・要医療高齢者が集中する病院・入所施設での、新規入院・入所者への検査
③エッセンシャル・ワークを中心に、自主的に検査体制を組む施設・事業所の取り組みに対する財政支援
などを優先的に検討するように求めましたが、これについては部長からはこんな見解が示されました。

「高齢者施設の感染対策を支えるために新規入所者に検査を行うといったことについては、何かしら手は打ちたい。行政検査にはしないけれども自費の補助というスキームもある。都補助の動きもあり、活用したい。施設で出たときの広めの検査の費用補助も考えられる。」

この件に限らず、全体として少しずつでも動いていく可能性が感じられるやり取りとなりました。スピード感や踏み込みの大小という問題ではまだまだ溝が深いとも言えますが、部長からは「第3回定例区議会での補正予算を待っているわけにはいかないだろうと思っている。方策は考えざるを得ない」という話もありました。区のいっそうの努力と決断を期待したいと思います。

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