練馬区、PCR検査センター開設へ

練馬区では、新型コロナウイルスPCR検査の体制拡充を図るため、「練馬区新型コロナウイルスPCR検査検体採取センター」を開設します。
車に乗ったまま検体を採取するドライブスルー方式を採用し、当面は、一日30件程度の検体を採取する予定です。
地域のかかりつけ医が検査を必要と判断した場合に、保健所を介さずに検査を行います(完全予約制)。
練馬区医師会の全面協力により、医師や看護師等を派遣してもらい、5月8日(金)からの開設を予定しています。
(2020.5.1 報道発表資料より)

練馬区がPCR検査センター、正確に言うと「PCR検査検体採取センター」を開設することを発表しました。場所は、光が丘第七小学校跡地。開設期間は5月8日(金)から6月30日(火)までとなっていますが、毎日開所するのではなく、当面は週3回(1日2時間程度)を予定しているとのことです。焦点の一つであった受診方法については「地域のかかりつけ医がPCR検査を必要と判断した場合、かかりつけ医が医師会内に設置した予約センターへ直接予約を行い、保健所を介さずに検査を行う」と説明されています。(図参照)

 

あらためて整理をしておきます。「新型コロナ」ウィルスについてのPCR検査は、これまでは①感染症法に基づく検査(行政検査)として、②電話相談センター(帰国者・接触者相談センター)で一元的に受付をしたうえで、③保健所が国の示したガイドラインに沿って検査の要否を判断し、④指定された「帰国者・接触者外来」の受診を経て検査を受けるという流れが基本になっていました。また、当初は検査自体も限られた公的な検査機関(都の場合であれば東京都健康安全研究センター)だけが行うこととされていました。こうしたことから、検査を受けること自体が難しい、検査を意図的に絞っているのではないかという指摘が繰り返し繰り返し、また各方面からなされていたところです。ここに来て、特に軽症者や「無症状者」などみずから検査のスクリーニングの土俵に乗らない感染者が多数存在することがほぼ確実となっています。そもそもの検査の目的、意義、役割自体に立ち返った検証が必要になってきているのですが、少なくとも検査の対象や範囲を拡充し、症状を有し感染の疑いのある人をできるだけ広くかつ速やかに拾っていく体制を整えることは急務です。

こうした中、国は3月に入って検査を保険診療扱いとし、民間の検査機関での検査を公けに位置づけ、一般の医療機関からの検査紹介という流れを認めました。しかし、この時点では検査を受けるためには相変わらず保健所の判断が必要であり、検査自体はあくまで「行政検査」——感染症法に基づく検査という位置づけのままでした。
しかし、感染者が急増し、PCR検査に適切にアクセスできない感染者、疑陽性者の存在が多数、表面化する中で、国もようやく検査体制の見直し、拡充に動くことになります。転機になったのは、4月15日に出された『帰国者・接触者外来の増加策及び対応能力向上策について』という厚生労働省の通知(事務連絡)です。そこでは「同感染症が疑われる者を、検査・診療体制の整った医療機関へ確実につなげるためには、帰国者・接触者外来を増加、又は、より多くの患者を受けいれられるよう対応能力を向上していく必要がある」ことを認めつつ、次のように書いています。

帰国者・接触者外来都道府県医師会・郡市区医師会等に対して、行政検査を集中的に実施する機関として帰国者・接触者外来(以下「地域外来・検査センター」という)の運営委託を実施し、検査体制を整備することも検討する。地域外来・検査センターに事前に連携先を登録した地域診療所等では、直接、新型コロナウイルス感染症が疑われる者を、地域外来・検査センターに紹介することも可能である。
『帰国者・接触者外来の増加策及び対応能力向上策について』(現資料は こちら )

こうした厚生労働省の動きをさらに一歩、進める形で、政府の専門家会議は4月22日の『提言』(こちら)において、検査体制の大きな転換に言及しました。「医師が感染を疑い、重症化リスクを考慮して検査が必要と認める場合には、行政検査だけでなく保険診療による検査も活用して、遅滞なく確実に検査ができる体制は確保した上で、速やかに検査を実施すべきである」と明記したうえで、こう述べています。

都道府県等は、地域の医師会等と連携して、保健所を経由しなくても済むように、帰国者・接触者相談センター業務の更なる外注を推進するとともに、大型のテントやプレハブ等の設置や地域医師会等と連携した地域外来・検査センターの設置など、地域の実情に応じた外来診療体制を増強する。

東京都医師会が、すべての単位医師会47カ所で独自のPCR検査センターを開設するという方針を打ち出したのは、こうした流れを踏まえてのことだったと思われます。都医師会の動きに呼応し、あるいは先行する形で、23区を中心にPCR検査センター開設の動きが相次ぎます。練馬区も、都医師会の動きに先んじる形で独自の検討を始めたようですが、調整に手間取り、次々と他区に追い越される形になってしまい、ようやく月が替わっての発表となりました。

実は、先行する区もあわせてよく見ると、一言で独自の検査センターといっても、その事業の在り方は微妙に違っています。とりわけ問題は、検査受診の調整をだれが行うか、そして検査陽性者のフォローアップをだれがどう行うかという点です。特に前者については、保健所にこれまで通り調整をゆだねる形と、保健所を介さず、直接、医療機関と検査センターの間で調整するという二つのやり方があります。
練馬区は、結局、保健所を介在させない方式にしました(個別のヒアリングの経過の中では、当初は保健所を介在させる方式で検討していたようです)。この方式は、検査の円滑化、検査範囲の拡大、保健所の事務負担軽減という点ではまちがいなくベターですが、他方で、不可避的に増加(顕在化)する感染者のその後の対応をどうするかというより深刻な問題を突き付けることになるはずです。
陽性が確認されたのちの入院、療養、そして外来。入院と療養はとりあえず都が責任を負っていますが、特に療養の方は遠くない時期に各保健所設置自治体の仕事になってくる可能性があります。そして、外来はもともと都としては特段の対応を考えていません。また、旧来の保健所を介した行政検査は、あくまで積極的疫学調査(集団感染の広がりや特徴を確認するための調査)や入院措置と一体化されたものでしたが、今後は、保健所の意向や体制に関わらず検査が進み、濃厚接触者の追跡調査などは一部のクラスター感染や院内感染を除いては事実上、行われなくなっていく可能性が高いと思われます。入院措置についても、特に軽症者を中心に自宅や病院以外の療養場所での療養がさらに広がっていくことになるでしょう。そしてそれは、必ず新たな課題を私たちに突き付けます。つまり

  • 一般のかかりつけ医に陽性者、擬陽性者がアクセスすることが一般的になり、それらの医療機関における感染防護策が不可欠になる
  • 保健所を中心とした積極的疫学調査の対象とならない感染の広がりが顕在化してくる中で、地域社会としての公衆衛生的な感染対策の展開が問われてくる
  • 在宅もしくは非入院施設で療養する患者・感染者の医療、生活面でのサポートに関する多面的な課題が出てくる

といったことです。

PCR検査体制の見直しは、実際には≪2類相当の指定感染症への指定+専門の「帰国者・接触者外来」への集約+封じ込めとクラスター対策+入院措置≫を柱としたこれまでの「新型コロナ」対策の大きな転換、遅まきながらの転換の一歩です。それは、感染フェーズがすでに市中まん延期に差し掛かっていることの裏返しでもありますが、問題は、この転換の先にあるもの、必要なものがしっかりと描けているのかということです。
新たな検査センターの設置は、一面ではひっ迫した行政検査中心の体制の改善策ですが、他面では感染者の広がりという重い事実の前に、必要なフォローアップや受け入れの体制がしっかりと用意されないままに入り口(検査の門戸)だけを開くというリスキーな側面を持ち合わせています。私が「発熱外来」にこだわるのも、そのあたりの問題意識からです。

検査センターの開設は、ほんの一歩です。

|2020-05-03T20:09:44+09:002020年5月3日|コメントはありません

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