専門家会議の『提言』 ~「新型コロナ」”リスク対話”(4)~

“対話”、といってもとりあえず私から一方的におしゃべりしている状況ですが、それを続ける前に少し新しい素材をテーブルに上げておこうと思います。

一昨日4月1日、政府の専門家会議が『提言』を公表しました。

→染症対策専門家会議『新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言』

『提言』が焦点を当てたのは、①医療体制崩壊への警鐘を鳴らすこと、②そして国民の「感染リスクを下げるための行動変容」に向けた強いメッセージと枠組み作りに踏み込んだこと、でしょうか。

「日本では、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止の効果を最大限にするため、『①クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応』、『②患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保』、『③市民の行動変容』という3本柱の基本戦略に取り組んできた。
しかし、今般、大都市圏における感染者数の急増、増え続けるクラスター感染の報告、世界的なパンデミックの状況等を踏まえると、3本柱の基本戦略はさらに強化する必要があり、なかでも、『③市民の行動変容』をより一層強めていただく必要があると考えている。」(『提言』より)

具体的なところでは、①については「重症者を優先する医療提供体制の構築」がうたわれていますが、「それぞれの病院の役割に応じ総力戦で医療を担っていただく」といった抽象的なレベルにとどまっており、たとえば現在、指定医療機関に入院している非重症患者をどこにどう移すのか、そのために受けれ入れ先にはどのような体制と努力が求められるのか、そして一番肝心なそうした基盤整備を整えるための政治の課題は何かは読み取ることができません。また、そもそもの話として、国民の新型コロナに対する適切な理解を促し適切な初期診断をしていくべき第一線の診療所などの課題は視野からは消えているように見えます。
②についても、「変容」の内容自体は旧来のものと大差ありません。「夜の街」のリスクが強調されていることくらいでしょうか。むしろ「行動変容」を求めていくための枠組みとして、地域区分・地域指定の考え方の詳細を示したことが際立ちます。これは、「緊急事態宣言」のための素地づくりということなんでしょうね。

全体に、専門家会議は要するに政府の意向を受けながらその「対策」を根拠づけ道筋をつけるためのもので、地域や医療の現場から発し、そこを作り変え、感染リスク・医療リスクと実際に向き合い解決を図るための専門的で実務的なイニシアティブは期待すべきではないということかもしれません。私は、そのこと自体に深い危機感を抱きます。

さて、『提言』にはその本筋の内容からはいくらか外れますが、気になる記述がいくつかあります。紹介しておきます。

都の状況は「継続的に注視」

「オーバーシュート: 欧米で見られるように、爆発的な患者数の増加のことを指すが、2~3 日で累積患者数が倍増する程度のスピードが継続して認められるものを指す。異常なスピードでの患者数増加が見込まれるため、一定期間の不要不急の外出自粛や移動の制限(いわゆるロックダウンに類する措置)を含む速やかな対策を必要とする。なお、3 月 21~30 日までの 10 日間における東京都の確定日別患者数では、2.5 日毎に倍増しているが、院内感染やリンクが追えている患者が多く含まれている状況にあり、これが一過性な傾向なのかを含め、継続的に注視していく必要がある。」

これは、「オーバーシュート」という言葉の説明の部分です。この言葉は極めてあいまいに受け止められていますが、本来は増え方、そのスピードに焦点を当てた概念であった。上の引用にある「異常なスピードでの患者数増加」です。そして、専門家会議は、少なくとも現時点では東京なども「オーバーシュート」には当たらないという認識を示しています。

「子どもは感染拡大の役割をほとんどはたしていない」

「なお、現時点の知見では、子どもは地域において感染拡大の役割をほとんど果たしてはいないと考えられている。したがって、学校については、地域や生活圏ごとのまん延の状況を踏まえていくことが重要である。また、子どもに関する新たな知見が得られた場合には、適宜、学校に関する対応を見直していくものとする。」

学校が再び閉じられようとしています。いったん閉じられたものを開くのはそれだけ難しい。安倍首相の、唐突で機械的な、根拠の説明のない一律の休校措置は罪作りでしたね。少なくとも専門家会議は「子どもは感染拡大の役割を果たしていない」と言い切っています。冷静な議論が必要です。

政府の諮問の場としての限界、いいかえれば政治の論理や動機と、科学と医学の場、専門家としてのこだわりとの間で苦労をしている。そんな印象も受ける『提言』です。ただ、いずれにしてもこの『提言』からは、どうひねり回しても「全世帯に2枚のマスク」という政策は出てこない気がしますが、さて、どうでしょう。

|2020-04-02T23:32:46+09:002020年4月2日|コメントはありません

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