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東京都の「患者」数について ~「新型コロナ」”リスク対話”(1)~

市民の目線で、「新型コロナ」に関するリスク・コミュニケーションの機会を広げたい。そんな思いでテーブルを整えようと思いますが、とりあえず気になったことを記事として上げていきます。

昨日28日に都内で新たに「陽性」が確認された人が63人になり、最多を更新したとのことです。この間の日ごとの確認数の推移をまとめたグラフがこちらです。
→東京都『都内の最新感染動向』より

テレビなどでは、今日29日に確認された「陽性」者数はさらに増えて68人になったという報道も流れています。「急増」という評価は間違っていないと思いますし、この患者数の急増を受けて小池都知事が「重大局面」だと強い危機感をあらわにしているのも、それ自体は間違っていないと思います。
ただ、この「急増」の中身は一様でも単純でもないようです。

対話その1 患者の「急増」をどう見るか

政府は3月29日に『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』(こちら)を公表しました。その中では、ここのところ「感染経路が分からない患者が継続的に増えている」ということに注意を促し、それが「爆発的な爆発的な感染拡大を伴う大規模な流行につながりかねない」と指摘しています。それまでは「クラスター」型の感染、つまり特定の環境に置かれた小集団の中で多くの患者が発生し、同様の小集団発生が伝播していくような感染の広がりに対策の力点が置かれてきました。しかし、感染経路が負えない患者が増えていけば、特定のクラスターを追いながら感染の拡大を押さえていくという対策では不十分だということになります。小池都知事が「重大局面」と言い、新たなフェイズに移りつつあると言うのは、そうした基本的な問題意識からだろうと思います。

しかし、実際の患者の状況を見ると、事はそう単純ではないように思います。28日、29日の「陽性」者数のうち、実は半分近くが台東区にある永寿総合病院での院内感染によるもののようです。28日について言えば、63人のうち感染経路が判明していないのは調査中も含めて23人とのことです。つまり、3分の2近くは「感染経路が分からない」わけではなく、むしろ具体的かつ個別的に感染の経緯も事情も検証できるし、そうすべき人たちということになります。ここで必要なのは、少なくとも「首都封鎖」とか「緊急事態」といった大仰な言葉を振りかざすことではなく、院内感染を防ぐために何が足りなかったのか、何をすればよいのかを実際的・実践的にしっかりと検討し、公表し、そして共有することです。それは、これからたくさんの医療機関が——専門的な感染症対応の病院だけでなく街中の診療所まで含めた膨大な医療機関が感染対策に真剣に取り組まなければならない今こそ、とても大切な課題であるはずです。

“対話”を進めるために必要な材料

      1. 「陽性」者のうち、感染経路が分からない人の割合の推移
      2. 永寿総合病院での院内対策の状況と課題
      3. 一般の医療機関における感染防護対策の考え方と現状

池尻の考え

感染の広がり方が変わりつつあることには十分に注意を払いつつ、一つ一つの感染対策、リスク管理を現場にまで徹底していくこと、とりわけ医療機関と医療関係者の感染防止にもっと関心と力と資源を振り向けるべきではないか。

しかし、もう一つ重要な問題がありそうです。そもそも、私たちは簡単に「患者が〇〇人」と言っていますが、実際には公表されているのは「陽性」者の数です。つまり、PCR検査を受けて「陽性」(ウィルスを検出)と判定された人の数です。
もしPCR検査が一般的日常的に行われているのであれば、「陽性」の数は患者の数に限りなく近づくでしょう。しかし、実際はどうも違うようです。そしてそれは、感染対策の構想と計画、優先順位をエビデンス(客観的な根拠)に基づいて議論する際にはとても大きな問題ではないかとも思えます。ここは改めて。

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