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「再開発」でビル風、激増!? ~準備組合の資料から~

(要約)
石神井公園駅南口西地区の市街地再開発事業で高さ103mの超高層ビルが建設されると、周辺の風環境が激変します。「ビル風」に悩まされるスポットが7倍にも増えることになりかねません。


石神井公園駅南口西地区の市街地再開発事業。この事業の柱となる高さ103mの超高層ビルの建設で、周辺の風環境はどう変わるのか?

都市計画変更素案の説明会の場で、再開発準備組合から風環境の変化についてのシミュレーション結果が報告されました。その資料を、少しじっくりと眺めてみたいと思います。
まず、こちらが再開発前の状況についてのシミュレーション結果です。青と緑の丸印がそれぞれ何を意味するかはのちほど詳しく見ていきます。とりあえず、緑よりも青の方が風が強いということだけ頭に置いておいてください。

図の中、赤い丸で囲んでいる青印のスポットが、実は、ひとつ前の投稿で紹介したビル風が発生しているポイントと一致しています。あの動画のような風が吹く場所が青のスポットだと思ってもらってよいでしょう。
 →「ビル風」は、怖い ~「再開発」の大きな論点~ 

次は、再開発ビルが完成した後のシミュレーションです。

一見して、青のスポットが激増していることがわかります。線路の南側に限れば、再開発前は青のスポットは3か所。それが、再開発後は21か所、7倍にも増えることになります。特に、再開発ビルの北側、つまり駅西口正面一帯の風環境が大きく悪化していることがよくわかります。深刻な影響がある。この数字は、そう評価せざるを得ないものです。

結論を急ぐ前に、緑や青の色が意味するものを確認しておきます。4つの色で区別されたランクは、「村上方式」と言われる風環境の評価指標に基づくものです。村上方式の指標を一覧にまとめたものがこちらです。

わかりづらいですが、一日のうちの最大瞬間風速が10m/s、15m/s、20m/sを超える日数を推計し、その日数によってどのような用途の住環境であれば許容できるかをランクとして示したものになります。たとえば、10m/sを超える日が年間で10%つまり37日以下かつ15m/sを超える日が3日以下であればランク1になりますが、このランクは「住宅街の商店街、野外レストラン」でも耐えられる風環境だということになります。住宅街の商店街というのは、例えば開放型で品物が陳列されている店といったイメージです。このランク1が、最初に紹介したシミュレーション図の緑のスポットに当たります。青のスポットは、ランク2です。つまり最大瞬間風速が最大80日にまで増えるスポットです。

この村上方式という評価方法の大きな欠陥は、最大瞬間風速が一定の速度以上となる日数を推計するだけで、一日の中で何回くらいその速度を超えるかはわからないということです。単純に考えても、10mを超える風が一日に1回吹いた場合と、例えば10回20回と繰り返し吹いた場合では、風の実感も実害も全く違います。
加えて、この評価方式は定性的な指標を取っており、たとえばランク2の「住宅街、公園」とはどういう場所なのか、なぜそこではこの水準が許容範囲とされているかは、大いに検証の余地があると思われます。
そもそも、10、15、20mといった風速の風はどのようなものか? 一般に言われている説明ではこうなります。

日最大瞬間風速
10m/s ごみが舞い上がる。干し物が飛ぶ。
15m/s 立看板、自 転 車等が倒れる。歩行困難。
20m/s 風に吹き飛ばされそうになる。

10mでも「干し物が飛ぶ」。15mだと「自転車が倒れる」。20mでは自分自身が「風に飛ばされそうになる」。こうしてみると、なかなかしんどい風なのです。ただ、それが一日1回、ある瞬間に吹くだけならまだ耐えられるかもしれませんが、例えば30分や1時間、繰り返し繰り返し吹き続けるとしたら大変なことです。そして、「ビル風」というものは繰り返し繰り返し吹き下ろしてくることは、私たちが日々感じていることです。

最大瞬間風速の推計自体がそもそもどのような想定と方法の下に行われているかは、技術的なことも含めてよくわかりません。ただ、この推計方法を前提にしても、「再開発」前後に風環境が激変することは明らかです。
前の投稿の動画に戻りましょう。シミュレーション図の中の青いスポットでの風の様子です。繰り返し吹きつける強い風。これが「ビル風」です。こんな風が吹くスポットが、再開発ビルによって7倍にも増える。しかも、駅西口といういちばん人が集まり、誰もが通らざるを得ない場所に集中することを、私たちは深刻かつ真剣に考える必要があります。

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