条例はどう定めているか ~図書館の「防犯カメラ」(その2)~

-Summary-
個人のプライバシーに関わる情報は、どのように管理されるべきか。自己情報コントロール権という大切な人権に触れる課題です。防犯カメラ映像の取り扱いは「適切」だったと区は主張しています。はたして、練馬区の個人情報保護条例はどういう場合に個人情報の外部提供を認めているか。


練馬区の個人情報保護条例は、個人情報の目的外利用ならびに外部提供について詳細な規定を置いています。その基本は、「本人同意」です。区が取得管理している個人情報を目的外に利用したり外部に提供するにあたっては、本人の同意が必要である。これが大原則です。それは、「自己情報コントロール権」と言われる、自己の個人情報に対する基本的な権利の実現でもあります。
ただ、いくつかの場合にはこの原則によらず、つまり本人の同意がなくても外部提供等ができるということも、条例は定めています。具体的にどんな場合に「本人同意」抜きで外部提供できるかは、以下のようになっています。(第16条3項)

(1) 法令等に定めがあるとき。
(2) 出版、報道等により当該管理個人情報の内容が公にされているとき。
(3) 人の生命、身体、健康または財産に対する危険を避けるため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。
(4) 専ら統計の作成のために利用し、または提供する場合で、本人の権利利益を不当に侵害するおそれのないとき。
(5) 前各号に掲げる場合のほか、あらかじめ審議会の意見を聴いて公益または区民福祉の向上のために特に必要があると実施機関が認めるとき。

今回、問題になっている防犯カメラ映像の外部提供については、まず大前提として「本人」——これは提供される映像に個人情報が含まれている人のことですが、その本人の同意はありません。それにもかかわらず外部提供を行ったのは、この16条3項の(1)に該当するからということになります。

この「法令等に定めがあるとき」の解釈・運用については、『個人情報保護制度運用の手引』に詳細な説明があります。

管理個人情報の外部提供は、区の内部における目的外利用と比較して、プライバシー侵害の危険性が著しく増大することになる。また、本人が知らないうちに第三者に個人情報が提供されることにより、自己情報のコントロール権も損なわれることになる。そのため、外部提供をすることができる場合を、一定の範囲内に制限している。…(中略)…
3 第3項関係
(1) 法令事項
「法令等に定めがあるとき」とは、法律、政令、省令および条例に報告や通知を実施機関に義務づけた規定がある場合や、外部提供を命ずる旨の規定がある場合をいう。
区の機関以外のものが照会の根拠とする条文には「調査することができる」旨の規定の場合があるが、この場合には、つぎの要件を満たす場合に限り、法令事項を根拠とした外部提供をすることができる(平成 27 年 2 月 3 日第 8 期第 3 回審議会確認)。
①事件が特定されていること。
②照会目的に公益性があること。
③実施機関から提供を受けなければ当該目的を達成することが困難であること。
④提供する個人情報の内容や当該個人情報の使用目的や範囲、方法その他の事情から判断して、当該本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないこと。
また、照会や回答は文書によることを原則とする。
(『個人情報保護制度運用の手引』2018年版 84ページ)

この中に出てくる「平成 27 年 2 月 3 日第 8 期第 3 回審議会確認」について、少し説明をしておきます。実は、条例第16条3項(1)の「法令等の定めがあるとき」の解釈・運用が、この年、2015年から大きく変わりました。それまでは、例えば令状が出ているなど条例の実施機関(区長など)に個人情報の提供を命ずる規定が法令にある場合にのみこの項に該当する、それ以外の場合、たとえば捜査機関からの任意の情報照会などの場合は条例のこの条項には該当せず、外部提供はできないというのが、区の条例解釈でした。
しかし、2015年2月の情報公開および個人情報保護審議会で、区はこの解釈を大きく変えます。上記の①~④の条件を満たせば、捜査関係事項照会書などに対してカメラ映像などの個人情報を外部提供できるとしたのです。

条例の運用・解釈を変更することについて、区は「照会への回答が円滑に進まない状況」を改善するためと説明しています(審議会資料)。令状主義からの転換、ともいうべき条例運用のこの大きな転換は、改めてその是非にさかのぼって議論するに値するテーマですが、それはともかく、現在は上に紹介したような考え方で条例は運用されています。

さて、ではこの現在の条例解釈を踏まえたとして、新聞報道された防犯カメラ情報の捜査機関への提供は、本当に区が言うように「適切」な対応だったのか。条例に反する行為ではなかったのか? (続く)

|2020-01-19T19:23:58+09:002020年1月19日|コメントはありません

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