「認知症」施策の、この軽さ ~認知症デイ廃止議案に反対~

終了した練馬区議会第二回定例会の議案で、人事を除いて唯一、本会議での討論・採決になったのが『練馬区立デイサービスセンター条例の一部を改正する条例』です。

区立のデイサービスセンターは、現在、全部で8ヶ所あります。14年前に大泉、関、田柄、富士見台の4つの区立特別養護老人ホームが「民営化」され、併設のデイサービスも区立ではなくなり、さらに今年6月の議会で練馬中学校デイサービスセンターも廃止になったため、数はずいぶん減りましたが、いずれも高齢者の在宅支援の拠点施設として頑張ってきました。

その8つのデイのうち、社会福祉事業団が指定管理者として運営する7つについて区が「原則廃止」の方針を打ち出したことは、このブログでも触れました。
◆前川区政、区立デイサービス「廃止」を宣言!→ こちら 
◆区立デイ「廃止」を撤回せよ ~本会議での討論から~ → こちら

残りの1カ所、高野台デイサービスセンターは、社会福祉法人・安心会が運営しています。区立のデイの中で唯一「認知症対応型通所介護」、いわゆる認知症デイを条例に基づいて実施しているデイになります。この認知症デイを廃止しようというのが、この議案45号です。認知症デイに続いて、一般デイの方も2029年度に廃止するという方針も示されています。これで、すべての区立デイが数年後には姿を消すことになります。

本会議では、私も議案に反対の立場から討論に立ちました。採決の結果、反対は私のほか共産党、インクル、練馬ネットの計11人のみ。認知症の当事者・家族の姿は見えているのか? ケアに当たる皆さんの意見を、誰か聞いたのか!! 情けなく、腹立たしい議会のありようです。

以下、討論を採録します。


区立地高野台デイサービスセンター。都営住宅に併設されている

議案第45号に、反対の立場から討論を行います。

もう30年近く前になります。
区立の特別養護老人ホームに、認知症に対応したデイサービスができました。そこで働いていた友人から、こんな話を聞いたことがあります。

「センターからよく出ていく利用者がいるけれど、止めたり鍵をかけたりしないようにしている。どうしているか。職員が一人、付いて一緒に出る。とことん、付き添う。そのうち家にいってしまい、入れなければ、戻ってくれるかな、と期待して…」

また、最近のこんな話も。

「独居の認知症の方で、デイにいくことの理解が難しくて諦めていたけれど、小規模のデイで、ここならというところがあって、お願いした。朝、何回も訪ねてくれたり、でもどうしても無理な時は、職員さんが、昼食を用意してから引き上げてきた。今では、その方はそのデイが大好きだ。」

こういう話を聞くとホッとしますが、しかし、これは今や例外的なことかもしれません。認知症の支援は、深く、地道で、ときに容易ならざるものです。そもそも通所に結び付ける困難から始まって、型にはまった支援や用意された枠になじむことのできない利用者をどう受け止め、理解し、信頼してもらうかという終わることのない努力。こうした認知症ケア固有の奥行きや広がりは、ケアを支える専門性と経験、そして人的な体制あってのものです。

本会議場で、なぜこんなことを言わなければならないのか。
それは、今、練馬区には、まさにこの認知症ケアに対する深い理解と共感が欠けていると思えてならないからです。

本議案は、区立高野台デイサービスセンターで行われていた認知症対応型通所介護、いわゆる認知症デイサービスを廃止するというものです。
かつて19か所あったものが今は11。高野台が廃止されれば10になる。これだけ急激に事業所が減るのはそれ自体、深刻なことです。なぜ、こうなったのか。
ニーズは、可視化し、顕在化させて初めてニーズになります。見かけ上の利用者が減ったからと言って、ニーズが減っているとか、役割が終わったということでは全くありません。それでなくとも、認知症高齢者の母数自体は急増し、独居高齢者の急増、老々介護の深刻化といった事態が進んでいるのです。
なぜ利用率が低いのかと問われて、区は、費用負担と名称の問題をあげました。驚きました。もしそれが事実であったとしたら、対策を講ずるべきです。ニーズかないのではなく、ニーズが利用に結び付いていないということを自ら認めているのですから。

専門的なケアを必要とする認知症当事者のニーズは、潜在化しています。いや、年々重くなる費用負担や地域の偏見、そして何より疲弊する介護現場が認知症当事者を受け止めるキャパシティをどんどん失っている中で、ニーズは潜在化させられていると言った方が正確でしょう。
区の仕事は、このニーズを可視化し、拾い出し、掘り起こし、それをサービス利用につなぐために何が必要かをしっかり考えることであって、表面的な利用率減少に乗っかって事業所をみずから潰していくことでは決してないはずです。

認知症デイはいつも上位に
居宅介護支援事業所が考える、今後整備が必要な地域密着型サービス
第9期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画より

利用率が低いと言われる一方で、ケアマネたちが、今後充実してほしい事業の上位に認知症デイを挙げ続けていることこそ象徴的です。ニーズは確実にあり、むしろ切迫したものとなり、しかし、それは、今はしっかりとは受け止められていないのです。
少人数の中での、個別性の高いケアを柱とした認知症デイの意義は、決して失われていません。むしろ、一般デイも含めた認知症ケアの底上げのためにも、認知症当事者と家族の頼りになる拠り所としても、認知症デイはますます大きな役割を果たすべきです。そして、区立のデイは、その先頭に立ち、要となるべきです。

認知症当事者と家族が泣いています。事業所が一つ減ることに泣いているというだけでなく、むしろかくもぞんざいに、かくも安易に、認知症ケアを取り扱う区の姿に泣いています。
今の福祉部、高齢社会対策部は、施設のスクラップ化と財政の効率化しか見えていません。そこまで所管を追い込んだ区長の責任は大変重いですが、しかし、所管がこれでは、本当に当事者・家族は救われません。
認知症ケアに対する姿勢を抜本的に改めることを求め、討論とします。

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