2人の日本人「人質」の、解放を願って

「イスラム国」が二人の日本人を人質とし“身代金”を要求していると報じられています。二人を救うために、日本政府に最大限の努力を求めたい。私たちにできることがあれば、とも思います。しかし、どんな努力か、何をすべきか、しっかりと考えてみたいとも思います。
安倍首相がエジプトで約束した2億ドルの支援が、今回の事態を誘発したことは間違いありません。この2億ドルは「人道支援」であって、「イスラム国」の非難は当たらないという論調を、朝日新聞や毎日新聞も取っていますが、とても納得できるものではありません。安倍首相のエジプト演説は、誰がどう読んでも、「イスラム国」と闘うために2億ドルを出すと言っています。以下は、外務省が公開している公式のステートメント(こちら)からの引用です。

「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」
パリでの銃撃事件以来、テロは憎いが、イスラム(の多数)は別だというロジックがよく使われています。安倍首相もまた、一方で「イスラム国」に対してこぶしを振り上げながら、他方ではイスラムに対する「寛容」を呼びかけています。しかし、私は、こうした“良識”はとても中途半端なものに聞こえます。
宗教としてのイスラムは、西欧の大国に抑圧され差別されてきた国、地域、民族、階級等々のよりどころ、シンボルのようにもなっており、そうしたものとして世俗の力を持ち、あるいは主張しつつあります。そして、解決されない抑圧や差別、終わることのない戦火と銃声は、しばしば容易に人々を――すべてではなくとも、誰かを、“テロ”に走らせます。
イスラムの中から不断に「テロ」が育ってくる社会的歴史的背景を真剣に考えることが私たちの責任であり、もっと言えば、みずから「テロ」の誘因を作り出している西欧の大国の陣形に日本があえて入り込もうとしていることをきちんと批判できなければ、私たちの責任は果たせないのではないか。「テロは許されない」という一つの真実は、イスラムに帰依する人々が抱えた困難や矛盾を取り除こうとする真剣な努力というもう一つの真実としっかり結びついてこそ、誠実な言葉になる。私は、そう思います。

そんな中で、一つの声明を紹介します。写真家の豊田直巳さんが、ツイッターで知らせてくれました。「人質事件」に関する≪日本ビジュアルジャーナリスト協会≫の声明です。個人的には、とてもしっくりくる意思表示です。ご覧ください。

IS( イスラム国) による日本人人質事件に対する声明

 日本ビジュアル・ジャーナリスト協会( JVJA )はフォトジャーナリストやビデオジャーナリストの団体です。
 私たちは、イラク戦争とその後の占領下において、米英軍を中心とした有志連合軍による攻撃がイラク市民にどんな災禍をもたらされたかを取材、テレビや新聞などで報道してきました。また、イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への無差別攻撃に晒された市民を取材し、テレビや新聞等で報道してきました。私たちの報道はけっしてアメリカやイスラエルの攻撃を肯定するものではありませんでした。
 私たちジャーナリストが、現場での取材を通して理解した戦争下の住民の現実だったからです。同時に、報道を通して私たちはあらゆる暴力を批判してきました。日本政府の戦争政策に対しても批判してきました。イスラエルのガザ攻撃に対しても、私たちは強く批判してきました。私たちは現在の安倍政権の戦争を肯定するかのような政策を、報道を通して批判しています。
  現在、IS(イスラム国)が拘束している後藤健二さんには、取材の現場で会ったことがあります。後藤健二さんもまた、イラクやシリアでの戦火に苦しむ市民の現状をテレビやインターネットで報道してきました数少ないジャーナリストです。湯川遥菜さんは、私たちと直接の接点はありませんでしたが、報道によると個人的な興味から「イスラム国」に入ったようです。
 私たちは、暴力では問題の解決にならないというジャーナリズムの原則に立ちます。武力では何も解決されない現実を取材をとおして見てきたからです。「交渉」を含むコミュニケーションによって問題解決の道が見つかると信じます。
 私たちは、IS(イスラム国)の皆さんに呼びかけます。日本人の後藤さんと湯川さんの2人を殺さないように呼びかけます。人の命は他の何ものにも代え難いものです。イスラムの教えは、何よりも平和を尊ぶことだと理解しています。
 私たちは、同時に日本政府にも呼びかけます。あらゆる中東地域への軍事的な介入に日本政府が加担することなく、反対し、外交的手段によって解決する道を選ぶようにと。
2015年1月20日
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)

|2015-01-22T18:49:00+00:002015年1月22日|コメントはありません

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