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「産院はたくさんある」!? ~区長発言の非常識~

 3日の記者懇談会で、実は区長はこんなことも言っています。

「残念ながら産科はいま受け入れができないという状況がある。でも、産科は区内でも産院がたくさんありそこにお願いすると。産科は病院だけ独自にというよりも、地域医療という考え方で、地域の個人の医者と連携することが大事。頭数が少し足りないかも知れない。けれどもそれを守って否とするわけにはいかないと思う。その辺は理解していただきたい。」

 光が丘病院の産科は、今、分娩を扱っていません。区も地域医療振興協会も「遅くとも9月までには始める」と言っていますが、ほぼ半年にわたって分娩自体が扱えないというのはたいへん深刻な問題です。もともと分娩を含む周産期医療は区が最重要の医療機能の一つとして強調してきたものであり、また、区民の関心も必要もきわめて高い医療ニーズの一つでした。地域医療振興協会を選んだ時も、区は、小児科とともに産科でも「日大と遜色ない体制の提案がある」ことをわざわざ指摘・評価していたのです。ちなみに、当初の協会提案では、産婦人科の医師体制は常勤6人。実際は常勤2人(非常勤2人)にしかなっていません。医師の体制が整わない中で、分娩自体を先送りすることになってしまったのです。
 こうした経過もあったからでしょう、区長は記者との懇談の中でわざわざみずから産科について言及したのですが、問題はそれに続いて語られた区長の認識です。
「産科は区内でも産院がたくさんありそこにお願いすると。産科は病院だけ独自にというよりも、地域医療という考え方で、地域の個人の医者と連携することが大事。」
 この発言は、驚くべきものです。いったい区長は何を見ているのか?
 練馬区は、病床全体はもちろん、産科のベッド数も大変少ない地域です。たとえば『練馬区病床確保・医療機能拡充検討委員会 報告書』にはこんな記述があります。

「練馬区内の医療機関で分娩可能な施設は、病院4施設、診療所3施設、助産所1施設の8施設(平成22年2月現在)にすぎず、練馬区民の全出生数うち、半数以上が練馬区外の医療機関で出産している。
 また、練馬区の人口当たりの産婦人科、産科の標榜数は、東京都平均より低く、産婦人科、産科に従事する医師数も、東京都区部平均の50%程度となっている。…
 区内で出産できる施設が明らかに不足していることから、区内に分娩可能な施設を整備するとともに、病院と区内の診療所、助産所との連携を構築し、区内での出産体制の充実を図ることが必要である。」

 「区内の全出生数のうち、半数以上が練馬区外の医療機関で出産」--これが現実であり、改めて指摘するのが恥ずかしいほど、区や区議会の共通認識となっていたはずの事実です。ところが、区長は言うのです、「産院がたくさんありそこにお願いする」と。
 練馬区内にある出産可能な医療機関は、わずか7施設。このうち光が丘病院が分娩を停止していますので、今は6施設です。少し古い資料になりますが、2010年度の総出生区民数は4,885人、そのうち区内の医療施設での出産は1,917人(39.2%)でしかありません。今年度は、この割合はさらに大きく低下するでしょう。どこに「産院がたくさんある」でしょうか!?
 光が丘病院の取り扱い分娩件数は、多いときで年600件を超え、最近でも400件に上っていました。ここがぽっかり穴があいてしまったのです。その影響は深刻です。しかも、小児科病棟を併設しているのは順天堂と日大光が丘だけでしたから、医療分娩や産前産後の医療管理も含め、光が丘病院が果たしてきた役割はとても大きかったのです。
 そんなことは、わかりきったことと思っていました。ところが、区長はどうやらこんなことも自覚しておられなかった。産科は、医療機能が確実に、大きく低下したことの象徴です。こうした事態に立ち至った区としての責任を率直に認め、産科の体制整備と機能の確立に全力で取り組む決意を語るのが、区長本来の仕事であったはずです。しかし、区長はまるで他人事のように“もともと医療機能の低下はわかっていた”“産院はたくさんある”と言う。深い失望と憤りを抑えられません。

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