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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「生活再建」

 年末年始、外環道の計画線の中にお住まいの方とお話しする機会が何回かありました。あらためて、「生活再建」への強い不安を感じます。

 外環道は、紆余曲折としか言いようのない変転を経て都市計画が地下構造に変更され、その後、政権交代を挟んで事業手法や財源問題も含めてさらに様々な議論が続いてきました。いや、今でも続いているというべきです。ただ、国も与党も東京都も、「外環道は造る」という意志だけは繰り返し明確にしており、昨年はついに道路区域の決定まで行きました。また、用地買収も動き出しています。今月には、沿線各地で「基本設計及び用地に関する説明会」が開催されることになっています。半ばなし崩しに、事業実施段階に移行しつつある。そんな局面でしょうか…。

     ➠説明会のご案内はこちら(国土交通省外かく環状国道務所のホームページより)

 こうした中で、計画区域にお住まいのみなさんは、外環事業への賛否にかかわらず、「生活再建」の課題と正面から向き合わなければならないところに来つつあります。しかし、この「生活再建」が容易ではないのです。国は、一定の基準に基づいて土地と建物などの価額を補償します。しかし、新たな土地と家屋は、基本的に地権者の皆さんが自身で探さなければなりません。せめて近所に、せめて同じ程度の住まいをと思うのは当然の心情ですが、しかし、近所に土地はなく、あっても補償金ではとても購入しきれない額であったりする。いや、そもそも「生活」は土地と建物だけで成り立っているわけではありません。ご近所や親戚・友人・知人といった「人」のつながり、病院やお店や公共施設やバス交通といったさまざまな社会基盤、営まれる生活のリズムや空気、環境や生活習慣まで含め、再建されるべき「生活」は実は極めて多岐にわたるものなのです。
 見知らぬ土地に移っても、若ければ、これから子どもを産み育てるような年代であれば、新たな生活を作り出していく可能性と力はあるかもしれません。しかし、計画線にお住まいの皆さんは、おしなべてたいへん高齢化しています。移転することによって失うものは厚く大きく、そして移転後にやり直す負担とリスクは半端ではありません。決して大きな声になっているわけではありませんが、しかし、じっくり伺えば強い不安がひしひしと伝わってきます。
 外環道については、青梅街道インタや「外環の2」に加え、外環本線についても財源問題や環境対策をはじめとして未整理の課題が多く残されています。本当に責任ある「生活再建」の見通しを示すことができるかどうかも、そのなかの一つ、最重要なもののひとつです。

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