Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「公聴会」は開かないのか? ~「外環の2」の都市計画変更~

 外環の2(外環道地上部街路)の都市計画変更は、「素案」の説明会とオープンハウスが終了し、東京都はこのまま「案」の提示と都市計画変更の法定手続きに入ろうとしています。

     ➡東京都都市整備局『都市計画変更素案のあらまし』

 私は、3回あった説明会の最後に参加しました。発言を求めて、ずっと手を挙げていました。私以外に何人もの方がそうしていました。しかし、質疑は打ち切られました。とても不本意でしたが、その際、質問してみたいと思っていたことの一つが「公聴会」のことでした。
 都市計画法は、都市計画の決定・変更について定めた条文の中でこう書いています。

(公聴会の開催等)
第16条  都道府県又は市町村は、…都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

 都市計画の「案」は、法律に基づいた正式の手続きの出発点です。この16条は、「案」ができる前に、つまり「素案」や「原案」の段階で「公聴会の開催等住民の意見を反映させるため」の措置をとるように求めています。しかし、今回、東京都は「素案」についての公聴会を開催するつもりはありません。説明会当日、直接、都の担当課長に確認しましたが、公聴会は開催しないと言っていました。どうして公聴会を開かないのでしょうか?
 法律には公聴会「等」と書いてあります。法律は公聴会に限っていない、公聴会でなくてもよいということでしょうか? 都はそんな認識のようですが、ちょっと納得しがたい。
 国は、都市計画法の実務を進めるために「都市計画運用指針」というものを定めています。その中には、この法16条の趣旨、意味合いについてかなり詳しく書かれています。そこにはこうあります。

     ➡国土交通省 『都市計画運用指針』

(公聴会・説明会の開催等)
 法第16条第1項では、都市計画の案を作成しようとする場合において、必要があると認めるときは、公聴会・説明会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講じることとされている。これは、都市計画の案が作成された後の手続としての法第17条の縦覧及び意見書の提出とは別に、都市計画の案の作成の段階でも住民の意見をできるだけ反映させようという趣旨である。特に、法第16条第1項において公聴会の開催を例示しているのは、住民の意見を反映させるための措置として、住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するべきという趣旨であることに留意する必要がある。
 この点、説明会は、都道府県又は市町村が作成した都市計画の原案について住民に説明する場と考えられ、公聴会は、都道府県又は市町村が作成した都市計画の原案について住民が公開の下で意見陳述を行う場と考えられる。
 都市計画への住民参加の要請がますます強まる中で、都市計画決定手続における住民参加の機会を更に拡大していく観点から、今後は、都市計画の名称の変更その他特に必要がないと認められる場合を除き、公聴会を開催するべきである。ただし、説明会の開催日時及び開催場所が事前に十分周知され、かつ、都市計画の原案の内容と内容についての具体的な説明が事前に広報等により行われ、住民がこれを十分に把握し得る場合であって、住民の意見陳述の機会が十分確保されているときは、その説明会を公聴会に代わるものとして運用することも考えられるが、この場合においても、住民がその内容を十分把握した上で、公開の場での意見陳述を行うための場となるよう十分留意するべきである。…
 公聴会・説明会の開催等については、住民の意見を十分汲み取ることができるようにすることが求められるものであり、作成しようとする都市計画の原案や関連する情報について具体的に提示するとともに、公聴会・説明会の開催日時、開催場所、事前の広報等に配慮するべきである。また、意見陳述を希望する者には物理的・時間的に対応が可能な範囲でできるだけ意見陳述を認めるとともに、公聴会の開催が形式に流されることなく真に住民の意見を反映させる場として機能させる観点から、運営に特段の支障を及ぼさない限り、例えば、公述人において希望がある場合には、都市計画の案を作成する都道府県又は市町村の担当者と、あるいは、公述人相互間において質疑・議論を行うこと等も考えられる。
 さらに、住民からの意見については、それがどのように都市計画の案に反映されたか等について都市計画審議会に報告することが望ましい。(P240)

 長い引用になりましたが、とても興味深い指針です。国はこう言っている。原案(今回は「素案」)について説明を聞く場である説明会とは違い、公聴会は「住民の意見を反映するため」の場である。公聴会は、住民が「公開の場で意見陳述を行う」ためのものである。そして、「今後は…公聴会を開催するべきである」。
 そのあとに続く但し書きも、公聴会を回避しようとする都の姿勢を正当化するものにはなりえません。「都市計画の原案の内容と内容についての具体的な説明が事前に広報等により行われ、住民がこれを十分に把握し得る」ようには全くなっていなかったからです。

 東京都は、公聴会を開催すべきではありませんか? このまま、都市計画の案の提示と法定手続きに移ってしまったら、法に基づいて運用指針が定めるルールをないがしろにしたことになりませんか? 大変大きな都市計画変更です。明確な見解を求めてみたいです。

コメント