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道路が「主役」!?  ~ゆがむ練馬の“まちづくり”(その2)~

「道路が主役」――みずからこう公言する区長は、真剣なのです。とりあえず言ってみた、とか、ちょっとしたレトリックとか、そんなレベルではありません。区長は、確かに、道路を「主役」にして練馬の町を大きく変えようとしています。
区長がまとめた新しい区政のビジョン、『みどりの風吹くまちビジョン』には、「戦略計画」の一つとして都市計画道路に関してこんな記述があります。

<5年後の目標>
2 都市計画道路の整備
・外環の2の整備を契機に、快適な都市環境を創出するものとして積極的に捉え、道路整備に対する発想の転換を推進
整備率を23 区平均である概ね6割に
<5か年の取組>
2 都市計画道路の整備
(6)平成27 年度に、都と区市町で、平成28 年度から37 年度までの10 か年を計画期間とした新たな事業化計画を策定します。この計画では、完成後の整備率が概ね8割になることをめざします。

5年後、つまり2019年までに都市計画道路の整備率を「概ね6割」にまで引き上げる。さらに、2025年までの10か年計画では「概ね8割」をめざす――練馬区の行政計画で、ここまで包括的で具体的な道路整備の目標数値を書き込んだのは、おそらく初めてでしょう。それだけでも、道路に対する区長の熱意、意欲、執着がよくわかるのですが、問題はこの数字です。
区内の都市計画道路は37路線、延長108.3kmです。このうち実際に整備された区間・路線は2013年3月末時点で完成52.9km、整備率48.8%とされています。この5割弱の整備率を5年で6割に、10年計画の完了時には8割に引き上げるためには、どれほどの道路を造らなければならないか? 簡単な計算です。
●108.3×0.6=65.0km 65.0-52.9=12.1km
●108.3×0.8=86.6km 86.6-52.9=33.7km

つまり、区長は5年間に12km、10数年後までには30km以上の都市計画道路を新たに整備すると宣言しているのです。すさまじい数字です。
ビジョンには、5年間に取り組む具体的な路線も数多く明示されています。外環の2は「早期の事業着手」、放射7号線(補助135 号線(大泉学園通り)以西)、放射35・36 号線(環状7号線~放射8号線)、補助230 号線(土支田通り~補助135 号線(大泉学園通り))は「早期の完成」。補助133 号線(補助229 号線(千川通り以南))などは「早期の事業着手」。補助132 号線(西武池袋線~都立石神井公園付近)は「完成」、補助135 号線(区街6号線~富士街道)は「事業着手」…。すでに事業認可されているものも含まれていますが、外環の2や135号線は計画段階で大きな議論が続いている路線です。裁判になっている外環の2、そして大二中をどうするか責任ある方針が全く示されていない135号線も、断固やる。そんな意思が透けて見えるビジョンです。その後の「8割」整備までにどんな路線を想定しているかはビジョンには明示されていませんが、現行の10年計画ですでに優先整備路線として位置づけられているものを見れば、135や232の延伸、放射35号の南進などさらに大きな問題を引き起こすに違いない路線が含まれています。
こうしてみてくると、道路とりわけ「都市計画道路」をどうするかは、練馬の区政、まちづくりの中できわめて重要な論点になってきたと言わざるを得ません。個々の路線、個々の区間の是非をはるかに超えて、練馬のまちづくり全体をどのように構想していくのか、私たちが描く練馬の「明日」はどんなものなのかが、鋭く問われてきています。(続)

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