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自治基本条例(その1) ~名は体を表す?~

 区政の懸案の一つとなっていた「(仮称)自治基本条例」の制定に向けた動きが、ここに来て一気に表面化してきました。6月23日の総合計画等特別委員会で条例の骨子案が示され、7月中に説明会、パブリックコメントが予定されています。「年度内の制定」が、区の方針です。
 この「(仮称)自治基本条例」は、2003年に策定された新行政改革プラン(2004~2006年度)の中にその制定が盛り込まれ、06年度には「(仮称)練馬区自治基本条例を考える区民懇談会」から提言も受け取っています。しかし、そこから今回の条例骨子案まで、「庁内検討」の長く、外からは見えないプロセスが続くままに実に丸4年もかかってしまいました。なんでだろう…。
 これだけ時間がかかってしまった理由はともかく、大切な条例ですから、時間をかけるべきときもあるでしょう。問題は、この4年の間に「庁内」で何が議論され、どこが問題にされてきたのか、そしてその中から出てきた骨子案は何を語っているのかということです。

 骨子案の本質は何か? 象徴は、条例の名称に表れています。骨子案は、条例の名称を「練馬区政推進基本条例」としました。「自治」が消えたのです。ずっと、「自治基本条例」と言われてきました。「仮称」ではありましたが、しかし、自治の基本的な仕組みや理念を語るべき条例であることは繰り返し語られてきましたし、そうである以上、名称も「自治」基本条例であるべきだしそうなるに違いないと、多くの人が思ってきたはずです。
 少なくとも区政や区議会にかかわるものであれば、練馬区もその一つである地方公共団体がどういうものであるべきか知っているはずです。「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」。憲法92条の規定です。地方公共団体は「地方自治の本旨」に基づいて組織され、運営されるべきであり、だからこそ地方公共団体は地方「自治」体とも言われてきたのです。地方公共団体にとって、したがって練馬区にとっても、「自治」はその成り立ちの根幹であり、「自治」こそは最高の原理でなければなりません。いやしくも区政の基本について語ろうとするならば、「自治」を大いに論じ、大いに称揚することこそがふさわしい。ところが、練馬区では、最後の最後で、名称から「自治」が消えてしまいました。
 条例の名称についても、この間、議会内で議論がなかったわけではありません。練馬らしい名前を、わかりやすい名前を、中身にふさわしい名前を、等々…。しかし、「区政推進条例」のどこが練馬らしく、わかりやすく、あるいは中身をよくあらわしていると言えるのか??
 そもそも「区政推進条例」では、いったいどんな区政を、どういう方向に「推進」していこうとするのかさっぱりわかりません。“名は体を表す”どころか、およそ顔つきも表情も皆目伝わらない無個性な名前です。率直にいえば、名付け親のセンスが問われる悪名です。こうした名称に変えたことに何か意味、意義があるとしたら、ただ一つ、「自治」を隠したということです。そして、どうもこのあたりに骨子案とこの4年間の紆余曲折の本質があるらしい…
 具体的な内容を見れば見るほど、この骨子案には「自治」隠しとでも言うべきもの、「自治」をできるだけ矮小化し、狭く描き、この条例を「自治」の武器ではなく、あってもなくても大して変わらないものにしてしまおうという精神、気分、姿勢がそこここに顔をのぞかせていると思えてなりません。「区政推進条例」という名称は、それ自体がどんなに魅力のないものであっても、「自治」を隠した、あるいは「自治」を恐れたという点で、ただその点でのみ、骨子案の内容を象徴していると言うべきかもしれません。ポイントを拾いながら、見ていくことにしたいと思います。

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