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東京ガス“再就職”は「都が決めた」!? ~前川区長と「豊洲移転」(3)~

前川区長と豊洲移転問題に関する一般質問の報告、前2回に続き、最後になります。

     ➡前川区長と「豊洲移転」(その1)

私が問うた二つ目の点は、東京ガスへの“再就職”についてでした。あらためて、通告しておいた質問を再掲します。
「➁区民からは、区長が退職後、間を置かずして東京ガスに入社したことについても、不明朗な天下りではないか、ルールは守られていたのかといった趣旨のご意見を多くいただく。市民感覚としてもっともなご意見と思われるが、区長自身は、こうした意見に対してどう考えるか。併せてお聞かせいただきたい。」

答弁は、こうでした。


前川区長が東京都を退職したのは、都政を揺るがせた百条委員会の議決の後です。百条委員会は、平成16年当時設置された訳でございますが、その時、練馬区の石神井学園の問題から百条委員会が設置されたわけでございますが、都議会の自民党を中心とした公明党、共産党、生活者ネットの皆さんが、当時の知事や副知事と闘っていただいた結果として、都政を牛耳っておりました副知事と刺し違える形で退職したわけでございます。
東京ガスへの再就職が「不明朗な天下りではないか」という点についてでございます。再就職を決定するのは、人事当局であり、退職者自身が自分で決めることではありません。またできません。東京都には、「職員の民間企業への再就職に関する取扱基準」というものがございます。この基準に反する再就職人事はあり得ません。現に東京都は、前川区長の再就職には何の問題もないと公表しております。
前川区長が東京ガスに再就職した当時、都議会やマスコミも含め誰一人として、これを問題視することはありませんでした。また、前川区長の再就職時には、東京ガスと都の間では法令・条例上の土壌汚染問題は既に決着済みのことでございました。今の問題のもととなっている土壌汚染の問題が再浮上したのは、前川区長が東京都を退職した後のことでございます。

う~む…百条委員会が何の関係があるんだろう。「牛耳っていた副知事と刺し違えた」って、それがどうしたって言うのかなぁ…。まぁ、石原-浜渦ラインと一緒にされるのは嫌だという区長の強い思いだけは伝わりますが、それと東京ガスの話がどうつながるのか、よく分かりません。
東京ガスへの再就職については、ちょっとびっくりの答弁でした。「再就職を決定するのは人事当局」。「退職者自身が決めることではない」――東京都は、本当にこう言っているんでしょうか。それこそ、都が一民間人と民間企業との間のことにまで人事権を行使するという話になって、それ見たことか「天下り」じゃないか!と言われかねないと思うのですが…。
実態として、東京都が幹部職員の再就職を切り盛りしているのかもしれません。しかし、いったん退職した者の人事です。形式的にも法的にも、紹介・斡旋ならまだしも、直接に都が決定する立場にはないはずです。
実際、前川さんは『週刊新潮』の取材に対してはこう答えています。
「再就職の希望を聞かれた際、石原さんや浜渦さんから逃れたくて、『都の出資を受けている第三セクターにだけは行きたくない』と答えました。その点、東京ガスは都と資本関係が全くない。それで再就職しました。」
なんだか、言っていることがずいぶん違う。こちらでは、自分から東京ガスをあえて選んだと言っています。週刊誌の記事だから、そのまま真に受けるのは申し訳ないことではありますが、いずれにしても、都が決めた、自分は東京ガスを選んでいないという本会議答弁は、容易には理解しがたいものでした。
再就職については誰も問題にしなかった、再就職の基準を定めている都も「何の問題もないと公表している」――私の問いに対する答えと言えるのは、この部分でしょうか。誰からも問題にされなかったのに、今頃になって何を言う! そう叱られているような気分で聞いていたのですが、しかし、これもまた、よくわからない。都の再就職基準に違反しているかどうか。それも大切なことですが、しかし、私が聞きたかったのはそれだけではありません。たとえ都の内部の基準にかなっていようが、局長として合意書に公印をつくようなところまで関わりのあった相手のところに再就職するのは、よろしくないのではないですか? 「市民感覚」ではそうですよ。違法でなくったって、道義的に、あるいは社会的に好ましくないこと、避けるべきこと、慎むべきことは政治の世界には山とありますよね。だって、都と東京ガスとのやり取りは、こんなに多くの疑念が向けられているんですよ…。
私は、質問をこう締めくくりました。
「豊洲問題は、透明性を欠き、公平さを見失い、利権に流れ、保身に走る都政の闇の部分を見せつけています。それは、すべての政治家が今、自らを省みて自戒しなければならない姿でもあります。とりわけ関係当事者の一人であり、都庁での経験と実績をひっさげて練馬区に来られた前川区長には、この問題に対して明確に説明責任を果たされることを期待して、一般質問を終わります。」
百歩譲って、当時は東京ガスとの交渉がこんな問題になるとは予想できなかったとしても、幹部たるもの、結果責任から逃げてはいけません。今振り返ってどう考えるかはきちんと聞かせてほしかったです。
副区長の答弁は、「意図的なフレームアップ」「議会の品位を貶める」と、議場で許される限りの言葉をきわめて私の質問を非難しています。正直、ここまで言われると聞いていて苦しくなったのですが、しかし私は、確認書や合意書に公印をついているという事実を念頭に、問いました。単なる伝聞ではありません。それに、東京ガスの再就職なんて何? という声は確実に巷にあり、そしてそれは市民感覚としてしっかり耳を傾け説明責任を果たすべきと考え、区長の認識を問いました。いろいろ振り返ってみますが、そんなに恥ずかしい質疑をしたとはどうしても思えません。肝心なことには答えず、長広舌の中であれやこれやと話を振り回し、人を貶める言葉を探すのに躍起になるような答弁の方が、ずっと恥ずかしい。
そう思えてなりません。
いずれにしても、貴重な質疑と答弁でした。何かが解決された、解消されたという意味ではなく、大きな認識の相違と深刻な感覚のずれがあることが確認できたという意味で。(終)

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