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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

家の買換えと介護保険料 ~減免対象の見直し・拡大を~

「家を買い換えた、売ったお金より買う経費の方が高かった、それなのに介護保険料が跳ね上がった。なんで?」
こんな声を受けて、介護保険料を減免する仕組みの見直しが始まっています。練馬区でも、減免に踏み込む条例改正案が提案され、今日の委員会で可決されました。
土地・家屋を売ったお金が買換えで残っていない、あるいはひどく減ったのに保険料が急騰するのは、次のような事情があるからです。
1.土地・建物を譲渡した場合、租税特別措置法に基づいて3,000万円まで(公共事業のための譲渡の場合は特例で5,000万円まで)の所得控除が認められている。
2.国民健康保険や後期高齢者医療保険の場合は、この特別控除の所得に対して保険料をかける仕組みになっているが、介護保険だけは控除の所得をもとに保険料を算定する
3.したがって、買換えで譲渡所得を吐き出してしまった人にとっては、実際に手元に残っているものがわずかであったりむしろ支出がかさんでいたとしても、多額の収入があったかのような高額の介護保険料を請求される
どうして介護保険と国民健康保険などで保険料賦課の仕組みが違うのか? そこは、介護保険制度創設の際の経過にさかのぼる話で、よくわかりません。ただ、事実として、同じ社会保険の中で制度の不均衡があること、実態のない所得をもとに保険料を取られてしまっていることは確かです。
この問題が苦情として国に上がり、これを受けて総務省が厚生労働省に対して斡旋(あっせん)を行いました。今年3月のことです。斡旋の趣旨はこうです。
「厚生労働省は、保険者(市町村)における保険料の減免が介護保険財政に影響を与え得ることを明確にした上で、市町村に対し、条例により自宅買換えの際等に保険料の減免措置を講ずることができることを周知する必要がある。」

     ➡自宅買換えに係る介護保険料の減免措置の促進(あっせん)

斡旋を受けた厚生労働省は、5月末に「自宅の買換え等に係る介護保険料の減免について」(老介発0529第1号)という通知を出し、それを受けて各自治体で検討が始まりました。今回の練馬区の条例改正も、その一環ということになります。区の説明では、条例改正によるこの保険料減免に乗り出すのは23区で練馬区が初めてとのことです。
国があっせんした経緯からしても、また、そもそも制度間で保険料の賦課対象所得が異なるという事態そのものが合理性に乏しいということからしても、減免を図るのは必要なことです。その点では、区の対応は評価できます。しかし、実は区が提案した減免は、どうも中途半端なのです。というのは、減免対象が「公共事業への協力により自宅を譲渡し、新たに自宅の買換えまたは建て替えを行った」もので5,000万円の特別控除を受けた場合に限られているのです。
要するに、公共事業と関係なく家を建て替えた人は、減免しないというわけです。しかも、ここでいう公共事業は、土地収用が法律上認められているような事業です。自宅の買換え・建て替えをする人の中で、この条件に該当するのはたぶん1割とかその程度でしかないでしょう。
なぜ対象を狭めたのか? 区は、当初は範囲を広げると一般の介護保険料に跳ね返る部分が大きくなるというようなことを言っていましたが、どのくらいの件数になるのか、保険料への影響はどの程度なのか、試算もしていませんでした。
もともとのあっせんの趣旨やそこで指摘された課題からすると、対象を制限するのは適切なこととは思えません。委員会の審査では、私も含め多くの会派から対象を拡大するようにという要望・意見が出されました。対応を図るべきです。

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