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地域医療の中で何が期待されているか ~順天堂附属病院の増床計画 (その4) ~

順天堂附属練馬病院の90床増床計画。区から30億円にのぼる財政支援が予想される中、この増床を通してどんな病院になっていくかは区民・区政の重大な関心事とならざるを得ません。
増床と合わせて外来機能が再編されることで、外来患者さんへの負担増が懸念される。この点は、前回触れました。もう一つの論点は、増える90床を一体どのように活用するのか。言い換えれば、この90床をどのような機能を持った病棟・病床として整備するのかということです。
あらためて、増床される90床の配分内訳を示す資料を転載します。区議会の委員会に提出されたものです。
5階から7階は、既存の専門科病棟の拡充です。4階は、病床の大きな組み換えが入りますが、基本は周産期機能の強化であり、趣旨は明確です。3階のICUの2床増もわかりやすい。問題は3階の残り30床と2階の54床です。事実上、増床分の大半にあたるのですが、しかし、この二つの病棟がどのような性格・機能のものになるのか、しっかりした説明はいまだにありません。
「どの科を置くかは決まっていない」
「婦人科混合の減49床。ほかの科に入院していた女性の方でこちらに移れる方を移動されるなど、ベッド調整で使っていた。そのベッド調整を2階3階でも行っていくと聞いている」
これが、委員会での担当課長の説明です。う~ん、よくわからない。多額の税金を投入することとなる増床です。地域医療の中核病院として位置づけられた同病院の貴重な増床分が、もっとも効果的に、またもっとも地域医療に貢献できる形で活用されるようにすること。それは、順天堂と練馬区の大きな責任であるはずですが、その肝心な部分があいまいなままであることはとても残念です。
私は、一つの考え方として、増床分のすべてではなくとも一部を「地域包括ケア病棟」として整備したらどうか、ということを提案しました。
地域包括ケア病棟は数年前に新たに制度化されたものです。
「地域包括ケア病棟とは、急性期医療を経過した患者及び在宅において療養を行っている患者等の受入並びに患者の在宅復帰支援等を行う機能を有し、地域包括ケアシステムを支える役割を担う病棟または病室。」(診療報酬施設基準)
地域(在宅、介護施設等)→地域包括ケア病棟→在宅。(高度)急性期医療機関→地域包括ケア病棟→在宅、もしくは他の入院医療機関。こんな流れの中に位置づけられたのが地域包括ケア病棟です。私が、この地域包括ケア病棟のことに触れた理由は、いくつかあります。
  1. 順天堂は高度に渡る急性期対応を基本とする医療機関である一方で、地域医療支援病院としての指定を受け、地域の医療機関との連携、バックアップをその大きな役割としている。地域の医療機関や在宅で療養する患者さんの増悪時の受け入れを担う地域包括ケア病棟は、順天堂の果たすべき役割に添っている
  2. 区としては順天堂以外にも地域包括ケア病棟の整備を進めるとしているが、療養機能と併設されたものが基本であり、二次救急機能を持ち急性期対応にも備えのある地域包括ケア病棟は、計画中も含めてごくわずかである。
  3. 地域の医療関係者からは、在宅で療養する患者さんの入院先として順天堂が極めて使いづらい(空いていない)という声は大変多く、地域包括ケア病棟へのニーズは高い。
  4. 順天堂から逆紹介で退院する患者さんのうち半数以上が区外に出ている。その多くは他の病院に入院していると思われるが、転院数の多い医療機関を見ても区外が4割近くになっている。つまり、順天堂には入れないというだけでなく、順天堂から出るときに移る入院先が練馬にないということも、大きな課題となっている。
実は、順天堂と同様に高度な急性期医療機能を持つ都立病院でも、大塚病院や荏原病院では地域包括ケア病棟が置かれています。順天堂に置かれても、不自然でも不似合いでもありません。
90床増床の一部を地域包括ケア病棟として整備したらどうか。この私の問いについて、区は順天堂の理事者に問い合わせをしてくれたようです。答えは否定的なものでしたが、しかし、十分に議論・検討が尽くされたのか。私には疑問です。
もし2階3階に新たに置かれることになる病棟が、すべて他のフロアと同様の高度で集中的な急性期機能や施設基準のもとに置かれ、他のフロアの病棟と一体的に管理されなければならないとしたら、確かに、60床が4号館に置かれていることは非効率だとは言えるでしょう。外来を外の建物、つまり4号館に出し外来患者さんに負担増を強いてでもベッドを1号館に集約することには、それなりの合理性があるかもしれません。しかし、もし増床部分の一部を地域包括ケア病棟として整備するのであれば、それが別な建物にあることの弊害はぐっと小さくなるのではないか。そんなことも思います。
専門的な議論です。私自身も、つけ刃の知識で議論しているところがあります。しかし、大切な90床、大切な30億円の税金を投入するのなら、もっと広く地域の医療関係者や議会の意見をしっかり聞いて、計画を練り上げるべきです。

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