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医療と社会

 『現代のエスプリ』という雑誌がありました…確か、今は「休刊」となっていると思います。最近は心理系のテーマを取り扱うことが多かったようですが、以前、60年代から80年代にかけては幅広い社会的・思想的なテーマを取り上げて力のこもった特集を組んできた雑誌です。ちょうど大学に在学していたころ、ずいぶんと買い求めた記憶があります。中でも、『医療と社会』という特集(74卷/1973年)は、私自身が医学部にいたこともあって、啓発されることも多く、また繰り返し手にしたものです。
 懐かしさもあり、またいろんな意味で「医療と社会」について考える機会が多くなったこともあって、もう一度読みたいと思うようになりずっと探していたのですが、なにしろもう40年も前の出版です。ネット上でも見つからず諦めていたところ、親しくしている古書店主がなんと九州の同業者から取り寄せてくれました!!

 60年代初め、病院ストで告げられた医療危機は、「高度成長」下で深刻化し、70年代に入り保険医総辞退で新局面を迎えた。我が国の医療問題の発生・発展・危機化の歴史を探り、それらを解決し、真に国民のための医療を達成する道を見出すために、医療を社会的脈絡のなかでとらえた先人たちの足跡のいくつかをたどってみたい。(「この巻のために」)

 疾病、医療技術、医療提供の組織、そして医療を支える経済的な基盤…医療はまさに社会の中に、社会とともにあります。印刷業界での胆管がんの集中発生という衝撃的なニュースも、あるいは原発事故と放射性物質の大量拡散による深刻な健康リスクも、国保の破たんも、“税と社会保障の一体改革”も、医療と社会との深く、分かちがたいつながりを教えてくれます。社会の中で、社会とのかかわりの中で健康や疾病をとらえ返す。医療を支える社会のありようを、しっかりと問い返す。いのちと医療を論じる際に立ち戻らなければならない基本中の基本です。

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