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区営住宅38倍、都営住宅84倍!! ~もう一つの「待機者」問題~

 休会中の区議会定例会に、区営住宅条例の改正案が提出されています。もともと東京23区の公営住宅は「都営」が基本でしたが、小規模なものから順次、区移管が進んでおり、「区営住宅」の数は約800戸になりました。この区営住宅の管理運営の基本になるのが区営住宅条例です。今回の条例改正は、「地域主権改革」つまり自治体への権限移譲の一環として、区営住宅の整備基準、入居者の収入基準を区が独自に決められるようになったことを受けてのものです。自治・分権の流れが住宅政策にも及んできたというわけです。
 議会での議論の中で、私はあらためて公営住宅のあり方を深く考えさせられることになりました。何しろ、区営住宅の倍率は一般世帯で37.9倍、単身者世帯ではなんと149.5倍にもなっているからです(2011年度)。特別養護老人ホームの待機者が増え続けていることは、しばしば取り上げられてきました。しかし、公営住宅に入りたくても入れない人がどれほど多いか。この異様な倍率は、公営住宅の「待機者」問題が大きな政治課題であることを教えています。区は、これまでは都からの住宅移管を待つだけでしたが、いまや、みずから新規に区営住宅を整備することについて真剣に検討しなければならないところに来ています。

 もっとも、増えてきているとはいえ、区営住宅は基本的には都営の移管です。都営住宅は約26万戸。区営・市営住宅の十倍以上です。公営住宅の整備に対して一義的な責任を負っているのは、今でも東京都です。そして問題は、都営住宅も区営住宅以上に、深刻な“住宅難”が続いているということです。都営住宅の倍率は、世帯向けの一般募集で何と84.7倍にもなるのです(2012年5月募集分)。
 84.7倍…すさまじい倍率です。これだけ倍率が高くなってきた背景には、一つには社会の貧困と格差の広がり、その中での住宅問題の深刻化があります。しかし、それだけではありません。都営住宅の新規整備が、もう10年以上にわたって行われていないのです。建て替えは順次、行われていますが、それはいつも「集約化」とセットであり、建て替えの一方では中小の都営団地が廃止されてきました。石原都政のもとで、都営住宅の新規整備は止まってしまったのです。

 そもそも、公営住宅とは何か。公営住宅法には、こう書いてあります。

第1条  この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

 公営住宅は「住宅に困窮する低額所得者」に「健康で文化的な生活」を営むための住居を提供することを目的としています。まさに、憲法25条の生存権を支える住宅政策の柱が公営住宅なのです。その公営住宅を増やそうとしない。100倍近い倍率なのに、増やそうとしない。これは憲法違反、ってことではありませんか…?
 都の「住宅マスタープラン」などを見る限り、都は、今後も新規の整備をするつもりはないようです。たとえば「住宅マスタープラン」の意見募集の中では、都営住宅の新規建設を求める意見に対して「既存ストックの有効活用」しか言及していません。

<住宅マスタープラン(素案)に対する意見募集の結果> ➠都の公式Hpのこちらから
都民からの意見の概要
・都営住宅を新規建設すべきである。
意見に対する都の考え方
・都営住宅は、市場において自力で適正な水準の住宅を確保することが困難な世帯への住宅供給を行う施策の中心的役割を担っており、引き続き、既存ストックの有効活用を図ります。今後とも、社会経済情勢の変化に応じ、管理戸数を抑制しつつ、真に住宅に困窮する都民に公平かつ的確に供給します。

 このままでは、東京の“住まいの貧困”は深刻さを増すばかりでしょう。このままでよいのか。住宅政策の一翼を担うこととなった練馬区は、いったいどうするのか。重い責任を突きつけられています。

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