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中村哲さん、城山三郎賞を受賞

中村哲医師(ペシャワール会)の著書『天、共に在り』が、第1回の城山三郎賞(角川文化振興財団)を受賞したとの報告を頂きました。

     ➡ペシャワール会の公式Hp
     ➡2013.10.25のこのブログより 中村哲 『天、共に在り』
この賞は
城山氏が貫いた精神を受け継ぎ、小説、評論、ノンフィクションを問わず、いかなる境遇、状況にあっても個として懸命に生きる人物像を描いた作品、あるいはそうした方々が著者である作品を顕彰するために、2014年度から新たに創設したもの
とのことです。受賞した『天、共に在り』は、今年9月の練馬での講演会でも紹介させてもらいましたが、よい本です。昨年の菊池寛賞に続き、文学との縁のある賞が続いていますが、中村さんの思索が現場の実践を越えた奥行きをはっきりととらえてきていることの証のようにも思えます。

授賞式には参加できなかったそうですが、その時に寄せられたメッセージをペシャワール会の了承を得て紹介させてもらいます。簡潔だけれども語るべきこと語ったメッセージです。

角川文化振興財団、審査員、会場のみなさん

先ず、この席に来られない非礼を、深くお詫び申し上げます。

現在アフガン東部は水利工事の季節で、どうしても現場を離れられない事情があります。冬のこの時期でなければ、河川からの取水工事ができないからです。あまり知られていませんが、今この地の人々を苦しめているのは飢餓で、国民の3分の1に当たる760万人が飢餓線上にあると言われています。

この国の災難は、盛んに報道される戦乱だけではありません。気候変勣のもたらす農地の乾燥化=千ばつが、深刻な影響を及ぼしています。このために流民や飢餓が絶えません。私たちPMS(平和医療団・日本)は、もともと医療機関ですが、飢傲や渇水を薬では癒せません。病の背景に食糧不足から来る栄養失調かあるからです。そこで、この10数年、灌漑事業を中心にした活動が展開されてきました。分けても、大河川からの取水技術の確立がテーマで、これが本日来られない理由です。

言い訳が長くなりましたが、これによって、私たちの「緑の大地計画」の目標、アフガン東部で16,500ヘクタール、60数万農民の生存できる耕作地を確保しつつあります。

日々河との格闘です。人はどこに向かって流れているのか、河の流れを見ながら考えます。現地で30年余、いろんなことがありました。しかし、私たちの仕事には、党派を超え、国境を超え、民族を超え、誰もがうなずく希望があります。

アフガニスタンは日本から余りに遠く、なかなか理解が得られないこともあります。しかし、他人事ではありません。日本白身が大きな矛盾と悩みを抱えています。「9.11」、アフガン空爆、内戦、中東の混乱、金融破綻、大震災――破局への不安と戸惑い、品のない憎悪と暴力の応酬や、経済至上主義が支配する世界です。この中で、私たちの軌跡が一縷の希望を与えるなら、この事業を支え続けた日本・アフガンの良心、民族や宗教を超えた人間らしい願いが、きっと城山さんのお眼鏡にかなったのでしょう。この賞の栄誉は、事業に関わる全ての人々に与えられたものと理解します。

これを励みに、更に力を尽くしたいと思います。

どうもありがとうございました。

                          平成26年12月 ジャララバードにて 中村 哲

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