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一般質問 ~高齢者と「社会参加」~

 少し間が空いてしまいましたが、一般質問に戻ります。今回は、高齢者と「社会参加」について。
 高齢者にも、障害者にも、「介護」のサービスが公的に保障されています。しかし、高齢者と障害者とでは、その「介護」の内容が実はとても大きく異なっています。介護保険法と障害者の自立支援法を比べれば、その違いは一目瞭然です。
 まずは、介護保険法。介護保険法は、その理念をこう記しています。

第一条  この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

 一方、自立支援法ではこうです。

第 一条 この法律は、障害者基本法の基本的理念にのっとり、…障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

 この目的規定だけでもいくつか大切な違いがあるのですが、ここでは、赤字にしたところを比べてみてください。高齢者の場合は「自立した日常生活」が目標とされているのに対して、障害者の場合は「自立した日常生活または社会生活」が目標とされています。障害者(自立支援法)にあって高齢者(介護保険法)にないもの、それは「社会生活」です。つまり、介護保険法は、そもそも高齢者の社会生活の支援を法の目的ととしていないのです。
 この違いはなぜ存在しているのか。また、それは許されることなのか。一般質問で、私はこう問いました。
 答弁は、なかなか苦しいものでした。そして、珍しく、区としての独自の見識をのぞかせるものでもありました。結論部分だけ再録すると

 両制度の違いは、法の対象が異なるとともに、制定された時代背景によるものと考えております。
 介護保険制度における高齢者の社会生活上の支援については、更なる高齢社会のなかで、区としても、検討が必要な時期に来ているものと考えていたところであります。

 「時代背景」が何を意味するか、よくはわかりません。しかし、「時代」は移るもの。そして、区は、介護保険法が制定された当時とは異なる「時代」になってきていると感じてくれているようです。後段では、はっきりと介護保険における社会生活の支援を「検討すべき時期に来ている」と答弁してくれたのですから。
 以前、要介護高齢者の「外出」についてこのブログで書いたように、高齢者にとってもまた、「社会参加」は人としての本来的な欲求であるはずです。

出かけること」2009.10.16

 もっといえば、介護保険の対象者は、決して「高齢者」に限られません。そこには40歳から64歳までの特定疾病の人たちが含まれていますし、実は、すべての障害者が65歳になると同時に、介護保険の対象者になってしまうのです。介護保険法と自立支援法が「社会生活の支援」という点でまったく異なる位置づけをしていることに、合理的な根拠は見出せません。
 一般質問では、特に「移動支援」について、要介護高齢者に対しても実施するように求めました。これについては、「要介護高齢者のための移動支援事業につきましては、まずは介護保険制度における高齢者の社会生活上の支援の一環として求められるべきものであると考えております」という答弁がありました。実現に向けた検討の行方を、注目していきたいと思います。

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