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カデナ…

 めったに本を読みません。もちろん、議員としての活動に関係する資料や本はとても追いつかないくらい溜まっていて、少しずつは目を通していくのですが、直接、仕事に関係のない小説などとなると、とんと読まない。読む暇を惜しまされてしまうのですが、久しぶりに一冊、読みました。
 池澤夏樹作、『カデナ』。池澤さんはとても好きな空気を持った文章を書く作家で、といっても読んだのはあれこれの随想やらメルマガ程度してかないのですが、ある会合でこの小説のことを知り手にしてみました。しみ込むように言葉が入ってくる、そして自然な共感が広がる、すてきな小説でした。
 カデナは、言うまでもなく、沖縄・嘉手納、米軍基地の町。時代は、ベトナム戦争のただ中。B52の出撃拠点と化したカデナの町で主に3人の男女が、互いに絡み合いながら「反戦」にかかわるその生き様と思いを一人称で語る物語です。運動としての「反戦」を描いたものではありません。主人公たちも、別に大上段に、大義をかざすわけでもない。自分を、自分の行いを、誇らしく、熱く語る人は誰もいない。でも、どの思いも、一人ひとりの人生と生活の根っこに触れている…生きるとはそういうこと、「反戦」とはそういうもの。いや、もう一度、「反戦」を、地に足を付けて、暮らしの中に、生きることの文脈において語り直したい。そんなメッセージと読みました。
 「フテンマ(普天間)」が、最後は「抑止力」というあまりに無機的で教条的な言葉によって決着させられようとしている今、そのことで私たちがどんな現実とどんな思いを切り捨てようとしているのか、この本を読んで改めて考えます。

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