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いま一度、「50億円」のこと ~光が丘病院問題の原点~

 光が丘病院問題をめぐる日大と練馬区の確執、争いの焦点にあったのが、日大が区に差し出した「50億円」の問題であることは、このブログでも何度か触れてきました。

     ➠「50億円」の謎 ~裏側から見る光が丘病院問題~ その1~8 2011.12.2~12.15

 しかし、その中でも十分に詰め切れていなかったことがあったなぁと、今、つくづく感じています。それは、「50億円」の会計上の処理の話です。
 2008年度の決算書類の中で、区の財務諸表に初めて日大からの「保証金」に相当する金額が債務として計上されたことは上記のシリーズ記事、「50億円の謎」の第5回でも紹介しました。2009年9月の決算特別委員会で、この書類についての質疑もあり、その中で公会計担当課長がこんな答弁をしているということも、そこで紹介しました。

 平成3年度に受け入れましたこの保証金につきましても、負債の性格を有するものであると判断いたしまして、その認識を明らかにするために、民間の企業会計で使われる勘定科目である長期預かり金が最も近い科目であると考えまして、これを設定して計上したものでございます。

 この議事録を確認した時、私は、区が50億円に関する財務処理の補正をした、補正をとりあえずは済ませたと思っていました。50億円は「財政調整基金」の中にあるという区の説明はなかなか無理のあるものですが、とりあえずは負債と認めたのだ、と。しかし、どうやら問題はちっとも整理されていなかったようです。

 議員になって9年になります。議員になる前から区政についてはさんざん勉強してきたつもりでいましたし、9年もやればたくさんのことを知りますが、しかしそれでも、いまだに新しい発見がしばしばあります。最近初めて知った言葉に、「雑部金」というものがあります。地方自治体の会計管理の中では基礎的な用語なのですが、しかし、ほとんど知られていません。それは、この雑部金がいわゆる「歳計外現金」、地方自治体の歳入歳出に属さない現金であり、したがって通常の予算決算の中ではまったく姿を現さないからです。
 この雑部金とはどういうものか。練馬区の会計事務規則にはこう書かれています。

練馬区会計事務規則
(定義)
第2条 (4)雑部金 債権の担保として徴し、または法令の規定により区が保管する現金または有価証券で、区の所有に属しないものをいう。
(雑部金の年度区分)
第102条 雑部金の年度区分は、受払を執行した日の属する年度による。
(雑部金の整理区分)
第103条 雑部金は、歳入歳出外現金と保管有価証券とに分類し、それぞれつぎの区分によって整理しなければならない。
(1) 保証金
1 入札保証金
2 公売保証金
3 契約保証金
4 住宅保証金
5 その他保証金
(2) 保管金…(以下、略)

 雑部金とは、「区の所有に属さない現金」です。その最初に挙げられているのは、保証金です。…そう、保証金!!
 日大が区に差し出した50億円については、日大側は“あれは医師会の赤字を埋めるために、区に工面してやったものだ”という実感があるようですが、ともかくも協定書や契約書上は「保証金」とされています。しかし、保証金はまさに「区の所有に属さない現金」であり、それは、歳計外の現金、「雑部金」として処理されなければならないものです。そして、雑部金は「受け払いを執行した日の属する年度」によって区分し管理されなければなりません。つまり、1991年度の雑部金として。
 区の雑部金のうち、契約にともなう保証金の類を管理する経理用地課長に、あらためて確認しました。区が雑部金として保管している保証金には、日大からの50億円は入っていませんでした。当然ですね。1991年の補正予算で、この50億円は一般財源として歳入に計上され支出されてしまったのですから。
 しかし…しかし、もしそうだとするならば、区は大変重大な例規違反を犯したことにならないのか。会計事務規則の定めに従って、雑部金として経理処理をし、かつ「区の所有に属さない現金」として保管すべき義務を果たさなかったのは、明らかな規則違反、ひいては地方自治法違反ではないか??
 日大から受け取った50億円を一般会計に繰り入れてしまったことは、少なくとも会計処理上は、練馬区がこの50億円を「区の所有に属する現金」とみなしたこと、言いかえれば勝手に“ポケットに入れてしまった”ことを意味します。そしてそれは、後付けでバランスシートに計上したり、「財政調整基金に含まれている」などといった説明で補正し糊塗できる誤りでは決してなかったのです。
 あらためて、50億円をめぐる区の初期の対応がいかにずさんで正義に反するものであったか、つくづくと思い知らされます。この面からも、契約の洗い直しと保証金の取り扱いの整理は避けて通れない課題でした。そしてそれこそ、日大が区に求めてきたことだったのです。

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