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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「母子手帳」に、たくさんの広告がついてきた…(その2)

練馬区から「母子手帳(母子健康手帳)」をもらうと、たくさん広告がついてくるというお話の続きです。

母子手帳の配布は、もともと公(おおや)けの仕事、税金を使って行われる仕事です。公けの仕事である以上、特定の企業や事業者に偏らない公正さ、公平さ、透明性が常に厳しく求められます。しかも、母子手帳は、法律に基づいて、半ば義務的に取得と記録を求められる書類です。“いやならもらわなければいい”と言ったたぐいのものではありません。
この点で、わざわざ手帳を受け取りに来た妊婦さんたちに一律に企業広告を手帳と同梱することは、たとえば区報や区のホームページに広告を掲載するのとはわけが違います。しかも、配布された広告セットの中にはある企業の「クーポン券」まで入っています。母子手帳とセットで配布されるクーポン券…このクーポン券を使って商品を買いませんか? そんなメッセージを、練馬区は妊婦さんたちに発信してしまっていないでしょうか。

妊娠が分かり、期待と不安と、それぞれの思いの中で揺れているに違いない妊婦さんたちに一律に押し付けられる広告物は、妊婦さんたちの善意と区に対する信頼を逆手にとっているようにさえ見えます。母子手帳に同封されているチラシ類を見たら、そこに出ている商品やサービスに対して区が何らかのお墨付きや評価を与えているかの誤解、あるいは混乱は間違いなく生じます。
もっとも、区も、このリスクは承知しているのでしょう。広告を入れる際の条件として、一応は「広告物には『広告物』の表示を行い、練馬区と関係しない旨を記載すること」と定めてはいます(広告取扱業者の募集要項)。しかし、実際はどうか? この要項に定められた記載を探すのに、実は、大いに苦労しました。確かに、ありました。というか、見つけました。ここです。
わかりますか? 広告がどさっと入ったOPPフィルムの透明の袋。その下の方、黄緑地の場所に文字が印字されています。こう書いてありました。

広告

この広告は自治体が特別に推奨するものではなく、掲載に関する一切の責任は各企業に帰属します。お問い合わせ等は、いったん以下の運営会社にご連絡頂けますようお願い致します。

(株)Visual Innovation ハッピープレママ事務局

パッと手にしたときには、字が書いてあるとさえ気づかないデザインです。そして、目を凝らしてみなければ、読めない字です。よくありますね。一応、書いてあるけれど、気が付かない、読みにくい、そんな注意書き。それと同じです。少なくとも、練馬区とこの広告チラシの内容は関係がないということをしっかりと伝えているとは、とても言えません。ずさんです。

母子保健の要となる母子手帳の事務までが、営利活動の舞台とされてしまう。公けの仕事としての最低限の節度やけじめすら、あいまいにされてしまう。情けないことです。それにしても、いったいどういう経過で、何のために、母子手帳に広告を同梱することになったのでしょうか? (続く)

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