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「教育勅語」答弁書

政府が教育現場で「教育勅語」の利用を認める閣議決定をしたという報道を受け、議論が広がっています。時代が時代だけに、また安倍政権の政治的思想的な傾向を考えれば、たいへん気になる報道です。ただ、この「決定」そのものをなかなか確認できずにいたのですが、ようやく入手することができました。

もともとは、民進党の初鹿衆議院議員が提出した質問主意書に対する答弁書です。したがって、何を、どう聞かれたのか。まずはここをきちんと確認することが必要です。質問主意書については、すでにその全文が衆議院のホームぺージ上で公開されています。
「教育勅語の本文をそのまま教育に用いることは憲法上認められない」「教育勅語本文を学校教育で使用することを禁止すべき」という立場から質問をしています。私見をはさめば、あまりよい聞き方とは思えないのですが、いずれにしても、問題の「閣議決定」がこうした質問に対する答弁としてなされたものであることは押さえておいた方が良いと感じます。
以下、質問と答弁を採録します。(青字が質問、赤字が答弁)

一 衆議院の排除決議において、教育勅語の根本理念が「主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる」として、この排除と指導原理的性格を認めないことが宣言されています。政府は教育勅語の根本理念が「主権在君」並びに「神話的国体観」に基づいているという決議の考えを現在も踏襲しているのでしょうか。
一について お尋ねの「決議の考えを現在も踏襲している」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「教育勅語等排除に関する決議」は、「教育勅語…その他の教育に関する諸詔勅…の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よって憲法第九十八条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めない」ことを宣言したと承知しているが、教育に関する勅語については、昭和二十三年六月十九日の衆議院本会議において、森戸文部大臣(当時)が「教育勅語その他の詔勅に対しましては、教育上の指導原理たる性格を否定してきたのであります。このことは、新憲法の制定、それに基く教育基本法並びに学校教育法の制定によって、法制上明確にされました」と答弁しているとおりであると考えている。
二 松野博一文部科学大臣は、記者会見において「憲法や教育基本法に反しないように配慮して授業に活用するということは、これは一義的にはその学校の教育方針、教育内容に関するものでありますし、また、教師の皆さんに一定の裁量が認められる」と発言し、その後の国会質疑でも同様の答弁を繰り返しています。
 衆議院の決議を踏まえれば、教育勅語は「民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」などの現在でも守るべき徳目が記載されているとはいえ、根本理念が基本的人権を損ない、国際信義に疑点を残すものであり、教育勅語の本文をそのまま教育に用いることは憲法上認められないと考えますが、政府の見解を伺います。
二について お尋ねのような行為が憲法に違反するか否かについては、個別具体的な状況に即して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。
三 衆参の決議を徹底するために、教育勅語本文を学校教育で使用することを禁止すべきだと考えますが、政府の見解を伺います。
三について お尋ねの「禁止」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、学校において、教育に関する勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切であると考えているが、憲法や教育基本法(平成十八年法律第百二十号)等に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではないと考えている。
四 教育勅語について、稲田朋美防衛大臣は「教育勅語の核である、例えば道徳、それから日本が道義国家を目指すべきであるという、その核について、私は変えておりません」「私は、その教育勅語の精神であるところの、日本が道義国家を目指すべきである、そして親孝行ですとか友達を大切にするとか、そういう核の部分ですね、そこは今も大切なものとして維持をしている」「教育勅語に流れているところの核の部分、そこは取り戻すべきだというふうに考えております」と教育勅語に共感する答弁を行っています。
 閣僚が教育勅語に共感、共鳴、賛意を示す事は、衆議院の排除決議で指摘した国際信義に疑点を残すことに繋がると考えますが、政府の見解を伺います。
五 国際社会において信頼される道義国家であるためにも、国際社会に疑点を残す考えを表明している稲田朋美防衛大臣は罷免すべきだと考えますが、政府の見解を伺います。
四及び五について 御指摘の答弁は、稲田防衛大臣が政治家個人としての見解を述べたものであると承如しており、当該答弁に係るお尋ねについては、政府としてお答えする立場にない。
 稲田防衛大臣については、本年三月二十七日の参議院予算委員会において、安倍内閣総理大臣が「今後ともしっかりと職責を全うしてもらいたい」と答弁しているところである。

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