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川辺へ、川面に ~久しぶりの川、白子川~

久しぶりに、本当に久しぶりに「川」に入りました。

川、といっても、街中を流れる小さな川です。普通なら、膝までもないくらいの浅い川。それでも、この川が貴重なのは、練馬区の中に源流を発し、そして練馬区の中で湧き出る湧水を唯一の水源とした川だからです。
東京の23区に、川の源流がある。それも、湧水が造る川。私の故郷、筑後川の荒々しくときに無人な姿に比べれば、かわいらしくもあり、いや矮小でさえあり。しかし、処違えば、川が持つ価値もまた大きく違ってきます。そうそう、この川は「白子川」と言います。白子川は、練馬やその周辺の水環境や水循環の貧しさと豊かさを見事に指し示す象徴的な指標でもあるのです。
かつて、白子川は豊かな湧水に支えられた清流でした。高度成長のころ、川は汚水にまみれました。その後、下水が整備されるにつれて川はきれいになりましたが、宅地化が進んで湧水は減り、他方、洪水対策が優先されて河川はコンクリートの三面護岸に覆われ、川面ははるか下、川は身近な存在ではなくなってしまいました。
長い時間をかけて、地域の粘り強い努力があって、川は再び暮らしのそばに近づき、人々は、川に親しむすべを思い出し、そして、私たちの暮らしと命をささえる水の、巡り、環りゆく姿に私たちの注意が向くようになってきました。そうしてこそ、今、やっと川に降りられるようになった自分がいます。
白子川のいくつかのスポットには、川辺に降りられる親水性の護岸、緩傾斜の護岸が整備されています。比丘尼橋の護岸は、なかなか大規模。しかし、この護岸に降りていく階段には、フェンスが設置されています。川に降りるためには、行政が管理する鍵を借りなければなりません。鍵を開けよう、と思い立ったのは、実は地元の小学校の子どもたちでした。若い担任の教師の熱意に促されて、子どもたちがみずから川に関わろうと動き出し、その動きに誘われて、私も川に入ることになったのです。この子どもたちの動きが、また、うれしい。
せっせとごみを拾う大人たちの横で、子どもたちは小さな魚やかわいいザリガニに喚声を上げ、その喚声は、護岸のツタ陰を這い上る蛇を見つけて悲鳴に代わります。なんともささやかな「自然」の体験ではありますが、こうして都市は人間性を取り戻していくのだと思い知るのも事実です。
水文学という言葉があります。水を通して世界を見る。大きく言えば、そんな学問です。そういえば、万物の根源は「水」だと喝破した人が、古代のギリシャにいましたっけ…。
(下の写真、ごみ拾いのbefore&after。きれいになりました!)

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