Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

地域医療振興協会が語ったこと ~光が丘病院は4月をどう迎えるか~

 新しい年の初め、区政の最大の課題の一つはやはり光が丘病院問題です。3月末での日大撤退、4月1日からの地域医療振興協会による新病院開院へと、区も区議会多数もいったんは舵を切りました。しかし、切られた舵がどこに船を導くのか、誰もよくはわかりません。他の誰でもない、練馬区と地域医療振興協会が、いまだに4月1日に向けて責任ある航路図を示すことができないからです。協会は、いったいどのような陣容で、どの程度の医療を担えるのか。4月1日はどうで、たとえば10月1日はどうなのか。説明会ではついに語られず、そしていまだに語られていません。
 いや、語られていないと言えば語弊があるかもしれません。語られてはいるけれども、裏付けがない。しっかりとした責任と具体的な根拠に基づいた言葉が語られていない。そう言うべきでしょうか。11月29日の第1回説明会でのこんなやり取りは、象徴的でした。

参加者 地域医療振興協会がへき地での医療を助けてきたことはたいへんなことだと思う。公募の際、日大光が丘が担ってきた医療をしっかり継承していただける、その器があるということで応募いただいたんだと思う。今日現在、医師、看護師が集まっていないということは、公募の段階で想定できたことではないのか。これまで光が丘病院は、日大板橋と連携しながら高度な医療を行ってきた。この地域には、小児科、内科などのクリニックはたくさんある。そういうところで手に負えない場合や深夜の救急を、受け入れてくれたのが光が丘病院ということはよくご存知だと思います。そういった機能を果たしてきた光が丘病院があって、それを継承するということをどの程度真剣に考えてきたのか、という想いがある。4月から産科セミオープンシステムは開いていただけるのか。自信があったから受けていただいたのだと思っている。
協会 いわゆるイメージとしてのへき地医療と、光が丘の医療が違うということは十分認識している。そのうえで協会が公募をさせていただいた。日大病院さんがされている医療については、とにかく4月からこれは引き継ぎますという約束でやっております。
参加者 4月からセミオープンもCCU(冠動脈疾患集中治療室)もできるんですね。
協会 今現在、日大さんがやっておられるものについては引き継ぎます。

 この質疑を聞いていた人はどう感じたでしょうか。答えたのは、協会の開設準備室の藤来本部長です。藤来さんの言葉に安心した? 少なくとも、私は違いました。むしろ、大いに不安が募りました。それは、言葉に責任を負う姿勢、根拠のないことは語らないという誠実さがどうしても感じられなかったからです。「4月から産科セミオープンシステムやCCUをやれるのか」「引き継ぎます」。本当にできるのでしょうか。実は、練馬区自身が議会ではこの二つの事業は年度当初は難しいだろうと答えていたものなのです。当然です。セミオープンの前に、そもそも産科の体制がしっかりと確立しなければならない。セミオープンをやるためには、区内の医療機関との連携がしっかりと取れなければならない。そんなことが4月までにできるのか? CCUもそうです。CCUを開設するためには高度な救急体制が確立していなければならない。バックアップとなる救命センターとの連携ができていないといけない。そんな体制が4月1日にあるのか。あったとしても、いきなりCCUの患者を受け入れるのは無謀ではないか。
 本当にできるのなら、誰もがあてにするでしょう。出産予定のたくさんの区民も、第一線の分娩医療機関も、救急医療の関係者も…。あてにされて、責任を負えますか? できないなら、できないと言えばいい。それが一つの誠実さというものです。ことは医療、人の命にかかわる現場です。勢いや決意だけではどうしようもないことはたくさんあるはずです。できないことよりも、できないことをできるという方が、私には何倍もよくないことに思えます。藤来さんはドクターです。セミオープンシステムやCCUの大変さはよくご存じのはずです。そして、ドクターに必要なのは、目の前の命に対する誠実さと謙虚さです。違いますか?
 地域医療振興協会が、光が丘病院の「後継運営主体」に選定されたのは9月15日。それから丸4ヶ月が経とうとしています。この4ヶ月の間、議会も区民も、いったい4月1日に光が丘病院はどうなるのか、具体的なことは聞かされてきませんでした。とてもよくない、無責任なことです。患者さんも、今いる日大の医師たちも、4月以降をにらんで目前の診療をどうするか考えざるを得ない時期が来ています。日大光が丘病院と連携してきたすべての関係者が、4月以降、連携に穴はあくのか、穴をどう埋めればよいのか、真剣に考えざるを得ないところに来ています。
 協会は何を、どこまで実際に用意できるのか。協会のもとで、光が丘病院は具体的にどんな病院としてスタートするのか。協会と、そして協会を選んだ練馬区は、ただちに語る責任があります。

コメント