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この違和感は何だろう? (2) ~「前川ビジョン」と基本構想~

「主権者でありまちづくりの主人公であるはずの区民の姿が、そこにはない」
練馬区の前川新区長が発表した「区政運営の新しいビジョン(素案)」について、私はこう書きました。

     ➡2015.1.14 この違和感は何だろう? ~新練馬区長の「ビジョン」を読む~

この違和感は、例えば、志村前区長が取りまとめた基本構想などと読み比べても、ますます際立ちます。基本構想には、例えばこんな文章が出てきます。

区政は、多様な価値観や文化を認めあいながら人権を尊重し、だれもが安心して暮らせる練馬区を、主権者である区民と区がともに築き、練馬の自治を発展させることを基本とします。

そのうえで区は、区民相互、そして区民と区とをつなぐものとして地域コミュニティの営みを大切にしながら、区民との協働を進め、区政経営の担い手としての責務を果たしていきます。
「人権を尊重し、誰もが安心して暮らせる練馬区」をめざす。「主権者である区民」と区が「ともに築く」。区は「地域コミュニティの営み」を大切にする…。区政というものが置かれている位置を、自治と民主主義の基本の中に落とし込めば、こうとしか書きようはないでしょう。現在の基本構想には不十分な点も多く、私自身も議会の中では厳しい批判をぶつけもしましたが、それでも、 長い議論の経過と積み重ねを反映して、区民の自治や参加、協働など自治体のあり方を考えるうえで欠かすことのできないキーワードが押さえられてもいます。行政組織としての区のあり方をうたった「区政運営の基本姿勢」と題された節にも、こんな記述があります。
区政経営の基本姿勢
1 区民主体、地域コミュニティ重視のまちづくり
区は、区民の暮らしの基盤となる地域コミュニティを重視します。区民は、地域に暮らす人とふれあい、地域の活動に参加するなどして、互いに信頼感をもってつながることによって、支えあい、心豊かに暮らすことができます。こうした地域コミュニティをはぐくむのは、一人ひとりの区民です。区は、区民の自発性・主体性を尊重しながら、地域コミュニティづくりを支援していきます。
2 区民と区との協働のまちづくり
区は、区民の区政への参加・参画を一層促します。区民やさまざまな団体、事業者と区が、それぞれ持ち味を十分に発揮しながら、地域の多様な課題の解決に力を合わせて取り組み、より良い練馬のまちをともに築いていけるよう、協働の仕組みづくりを進めます。

こうしてみると、現在の基本構想は、自治や民主主義への配慮、敬意をそれでも残していたのだと思い知らされます。そして、ここで紹介したような理念や姿勢、問題意識は、“前川ビジョン”には全くと言ってよいほど見出すことができません。
「ビジョン」は、基本構想の下位にあたる単なる行政計画ではありません。そこには、「計画編」とは別に「構想編」が置かれています。あえて“前川流”の構想を打ち出しながら、そこには「自治」も「権利」も「(区政)参加」もない。前川区長は、本会議の答弁でも「ビジョンを策定する中で、基本構想の見直しの必要性についても検討してまいります」と明言しています。意図は明白と言わざるを得ません。
しかし、区民の自治や権利、参加などを横(後ろ?)において、いったいどんな区政を進めようとするのか。区(区長)の責務は区民との関係でどのように位置付けられ、その権原は何に由来すると考えられているのでしょうか? (続く)

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